「紅白歌合戦」全舞台裏 視聴者置いてけぼりだった「紅組勝利」のカラクリ

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■「紅白歌合戦」全舞台裏(下)

 ここから後半である。RADWIMPSが映画「君の名は。」の主題歌を歌うところでは、新海誠監督に話を聞くことになっていたが、カット。調整がつかなかったようだ。

 福山雅治の中継では、引退した広島の黒田博樹投手がVTRで登場。「広島の土砂災害の惨状を見て、MLBを蹴って広島に復帰」と紹介されたが、

「野村前監督が退任したうえ、契約面で合意があったからにすぎません」(スポーツ紙記者)

 とまれ今回の紅白、被災地への配慮が目立った。総合司会の武田真一アナ(49)が熊本出身なら、途中で歌われる「ふるさと」は、くまモンをプロデュースした熊本出身の小山薫堂氏が作詞。そして福山の次に歌った演歌の島津亜矢(45)も熊本出身で、本人いわく「コンサートでもあまり歌ったことがない」、ふるさとが描かれた「川の流れのように」を“歌わされ”た。

 西野カナ(27)の場面ではレスリングの吉田沙保里、伊調馨、登坂絵莉がステージへ上がった。時間短縮のためかセリフが大幅にカットされたが、台本通りなら大炎上しただろう。リハでは「どんな相手が理想ですか」と聞く紅組司会の有村架純(23)に、吉田役のNHK職員が「男らしく私を守ってくれる人です」と答えると、白組司会の相葉雅紀(34)が「吉田さんを守る人は大変そうですね」と返す、シュールなやりとりだったのだ。

 auのCMで話題になった桐谷健太(36)の曲。企業名は出したくないNHKもやむをえず、有村に「浦ちゃん、がんばって!」と声をかけさせた。これ、スポーツ紙は有村のアドリブであるかのように報じていたが、台本通りなのである。

■審査員席がステージ上で

 AKB48は、リハで目立ったのが“卒業”する“ぱるる”こと島崎遥香(22)のやる気のなさ。一人腕組みをして突っ立っている姿は悪目立ちしていた。

 有村のボケっぷりもさらに目立ってきた。AI(35)が歌う前、ゲスト審査員で昨夏のパラリンピックに出場した辻沙絵に話を聞くと、仕事が終わったと思ったのか、固まってしまう。Perfumeの紹介でも、ボーッとして相葉に「紅組の番ですよ」と促され、「さあ、続いては」。架純ちゃん、緊張による疲れがピークに達してきたのか。

星野源

 一方、話題の星野源(35)がリハで見せたのは、緊張ではなく神経質な一面。音合わせは、若手は短時間ですませるのが暗黙の了解なのに、「音ちょっと下げてください」「もう一つ下げてください」。結局、17分を要して、すでに大物の風格であった。

 大竹しのぶ(59)は熱のこもった歌を聴かせ、その表情は「理科室に置いてある人形のよう」(吉田潮さん)。感極まって涙がこぼれそうだったが、曲を紹介した嵐の松本潤(33)もなぜかガチガチで、「演技者の先輩として、いつも、ひ、非常に尊敬している大竹さん」と声も手も震わせていたが、なにか“感極まる”理由でもあったのだろうか。

 相葉も疲れがピークに達してきたか。TOKIOの中継では、パラリンピックに出た陸上の山本篤に話を振るのを忘れてしまい、「失礼しました!」と繰り返しながら、取ってつけたように質問した。

 今回の紅白、タモリとマツコなどのほかに、ゴジラ来襲というフィクションが挿入された。松田聖子(54)の歌のあと、渋谷に来襲したゴジラを止めるには良質な音楽が必要だ、というVTRが流され、聖子の伴奏も務めたYOSHIKI(51)が、今度はX JAPANとして演奏する前に「僕たちが止めます」。実は、YOSHIKIは31日午前までのリハをすべて欠席。したがって、彼の返答はほとんどアドリブのはずだが、Toshl(51)の絶叫に押され、ゴジラは“無事に”凍結したのだった。

■評価の声も

「すいません」を20回、「ごめんなさい」を7回繰り返した相葉雅紀

 ケチばかりつけているようだが、昨年の紅白を評価する声を紹介しておこう。

「前回の紅白は、『スター・ウォーズ』やディズニーのキャラクターが客寄せパンダのように登場していた。今回はバラエティ要素にも工夫があり、映画『君の名は。』やドラマ『逃げ恥』など、2016年のポピュラーカルチャーを反映したものだという点で、音楽で1年を振り返るという、紅白本来の趣旨にも合致していたと思います」(上智大学の碓井広義教授)

 さて、大トリは嵐である。本番中に「すいません」を20回、「ごめんなさい」を7回繰り返した相葉も、ホッとしたのか、歌いながらすでに涙をためていた。

 そして視聴者と会場の投票結果を受け、白組優勝を確信して優勝旗を受け取りに行きかけたそのとき、まさかの紅組優勝に。どうしてこうなったのか。

「今回の勝敗は、視聴者と会場が2票ずつ、ゲスト審査員10票、ふるさと審査員1票の計15票で決められました。視聴者と会場の票はすべて白組に入りましたが、残り11票のうち9票が紅組に入った。今回は舞台を前方に広げたため、以前は客席の最前列にあった審査員席をステージ上にもってきた。だから、審査員たちは白組が圧倒的に優勢なのをステージ上から眺めることになり、せめて自分ぐらいは紅組に入れよう、と思ってしまったようです」

 とNHK関係者。しかも押せ押せで採点方法さえ視聴者に説明できず、司会者も混乱。こればかりは台本になかったようだ。

特集「紅組勝利にカラクリがある! 『紅白歌合戦』全舞台裏」より

週刊新潮 2017年1月12日号掲載

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