「天皇陛下」お誕生日会見、生前退位への言及は 「“摂政は感心しない”と仰っていた」ご学友語る

社会週刊新潮 2016年12月22日号掲載

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 12月20日に予定されている、天皇陛下の「お誕生日会見」。陛下と記者がやり取りできる唯一のこの機会に、安倍官邸は戦々恐々としている。

 陛下ご自身が生前退位のご意向をビデオメッセージで発表されたのは今年8月8日のことだが、

「実は、宮内庁から官邸に陛下の“退位のご意向”が極秘裏に伝えられたのは昨年の秋」

 と明かすのは、政治部デスクである。これを受け官邸は、“摂政を置いて公務の負担軽減を図る”という煩雑な法改正に着手しない方向でやり過ごそうとしていたという。

 しかし、官邸がこれを宮内庁に伝えた矢先にNHKが陛下のご意向を「スクープ」してしまう。

「まもなく発表された“おことば”では、皇室典範に定められ、官邸が進言した摂政案が否定されました。また、“象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ”というご発言からは、陛下が恒久的な制度を望んでおられることも明らかになった」(同)

■更迭人事で「落とし前」

皇后陛下は何を思われる……

 寝耳に水の「おことば」によって重い課題を背負った官邸は、「陛下を思い留まらせることができなかった」宮内庁幹部を意趣返しとばかりに粛清してきた。

「象徴的なのは風岡典之長官が退任を余儀なくされたことです」

 とは、宮内庁関係者。

「風岡さんは五輪招致の際、高円宮妃久子さまがIOC総会に出席したことを“苦渋の決断”と述べ、官邸から煙たがられていた。在任中、菅義偉官房長官と面会した時も“30分の約束だったのに10分しか話をさせてもらえなかった”とこぼしていました。宮内庁長官は70歳の誕生日を迎えてから最初の年度末で退くのが慣例です。ところが、彼は9月15日の誕生日から11日後に退任へと追い込まれました」

 続いて、10月1日付で退職の憂き目に遭ったのは宮家の事務を統括していた西ヶ廣渉宮務主管。NHKのスクープを手引きしたと囁かれ、詰め腹を切らされた格好だ。官邸は仁義なき更迭人事で「落とし前」をつけさせると、今度は杉田官房副長官と同じ警察官僚出身の西村泰彦元警視総監を、宮内庁のナンバー2である次長に抜擢する。そして、

「これまで宮内庁の幹部はメンバーから外れていた次官連絡会議に、西村次長が参加することになった。宮内庁も内閣府の一機関に過ぎないとアピールするのが狙いです」(同)

■ご学友が明かす陛下との電話

 だが、それでも官邸は依然として焦りの色を隠せないでいる。というのも、ここに来て次々に、陛下のご意向を代弁する声が上がっているからに他ならない。

 たとえば、秋篠宮殿下は先月30日のお誕生日に先立つ記者会見で、陛下のおことばについて触れ、

〈長い間考えてこられたことをきちんとした形で示すことができた、これは大変良かったことだと思います〉〈私もそのお考えに非常に同じような気持ちを持っております〉

 と賛意を表された。

 加えて、官邸が神経を尖らせているのは今月1日に新聞各紙が報じた、「ご学友」の証言だ。

「陛下からお電話があったのは7月21日の晩でした。私的な会話を表沙汰にするつもりはなかったのですが、陛下のご意志と全く異なる結論が出されることを懸念して取材に応じました」

 そう語るのは学習院の高等科まで陛下と同級生だった明石元紹(もとつぐ)氏である。

 電話でのやり取りのなかで、陛下から、次世代を含めた恒久的な制度を望んでいる、と打ち明けられたという。

「陛下は、長い歴史を振り返れば天皇が途中で代わった例はいくらでもある、たとえ生きているうちに自分が譲位してもビックリするようなことではないんだ、と。“摂政は感心しない”とも仰っていました」(同)

 実は、明石氏は陛下のビデオメッセージが発表される2日前に、この「おことば」を官邸に報告している。

「知人を通じて学習院出身の麻生財務相に相談したところ、杉田官房副長官を紹介されたのです。そこで官邸に伺って陛下のお話を伝えました。ただ、杉田さんの反応は、“国会議員の意見を集約して恒久法を成立させるのは大変難しい。せいぜい一代限りのご退位しかまとめられそうにありません”というものでした。正直、“結論ありき”なのだな、と感じました。有識者会議の議論にしても、本当に陛下のお考えを反映しているのか疑問に思います」(同)

■「陛下と親しいってことを言いたいだけ」

 明石氏は否定するが、官邸はこの発言を「宮内庁の差し金」と捉えたようで、萩生田光一官房副長官が、

「いきなりあんなことを言ってくるとは思わなかった。いまは特例法しか解決の道はないんだ。摂政を置くのが一番だけど、それがダメなら特例法しかない」

 と言えば、菅官房長官は、

「色んなことを言う人がいるけれど、結局、自分が陛下と親しいってことを言いたいだけなんだ」

 麻生氏も知人を介して明石氏に、

「官邸に足を運んでくれたことは有難いが、陛下とのやり取りを世の中に広めるのはやめてほしい」

 と、クギを刺したという。

 陛下のご学友に対して過剰とも言える反応を示すのも切迫感の表れであろう。

■ご不満を募らせて…

 そこには、有識者会議の現状も影響している。16人の専門家へのヒアリングが終わった時点で、条件付きを含めた賛成が9人に、反対が7人。賛成はさらに、恒久法と特例法のどちらが望ましいかで割れている。

 退位に「賛成」の立場の百地章・国士舘大学大学院客員教授はこう語る。

「皇室典範が出来上がった頃には想定されなかった高齢化社会が到来しているため、終身制を原則としつつも例外的に譲位を認める必要があるのではないか。典範の附則に根拠規定を置き、それに基づいて特別措置法を作れば高齢による退位も可能になると考えます」

 だが、「反対」する平川祐弘・東大名誉教授は、

「陛下は完璧主義的な理想を掲げて、昭和天皇よりもさらに精力的に公務に当たってこられました。しかし、その理想を実現するのが肉体的・精神的に難しくなったから退位されるというのでは、これまでの積み重ねを台無しにしかねない。この度のおことばの結果、超法規に近い措置が講ぜられれば、悪しき前例になってしまうと危惧しています」

 出席者2名の見解を挙げるだけでこれほどの隔たりがある以上、会議が収束するのは困難と言わざるを得ない。

「陛下が有識者会議の行方をご憂慮されているのは間違いありません」

 と嘆息するのは、先の宮内庁関係者である。

「陛下は2回目のヒアリングが終わった頃から、いたくご気分を害されている。その後も新聞やテレビで報じられる会議の内容に触れて、ご不満を募らせていらっしゃるのです」

 こうした陛下のご様子は官邸も知るところで、懸念に拍車をかけている。

 陛下はご自身の「退位」について何を語るのか。

特集「宮内庁vs安倍官邸の深刻すぎる対立『天皇陛下』お誕生日会見に戦々恐々の人々」より