トランプも知っていた、バカラ好敵手「日本人大富豪」刺殺体で発見の末路

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ドナルド・トランプ氏

 新米政治家のドナルド・トランプ氏は、海千山千の勝負師でもある。実は、選挙中に槍玉に挙げていたわが国に、かつて真剣勝負でぶつかり合った大富豪がいた。で、なかなかの“日本通”というべきか、ライバルの「末路」までご存じで……。

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 トランプ氏は1990年、自身の所有するニュージャージー州のカジノ「トランププラザ」で、一人の日本人と2度にわたって“死闘”を繰り広げていた。当時を知る関係者の話。

「山梨県の不動産業兼貸金業者『柏木商事』の柏木昭男社長です。豪州のカジノで29億円と大勝ちし、その世界ではハイローラー(高額な賭け金を張る上客)として知られていた彼にトランプ氏が目をつけ、バカラ勝負を申し出たのです」

 柏木社長は92年の正月、河口湖畔に建つ総ケヤキ造りの邸宅で刺殺体となって発見された。事件は未解決のまま時効を迎えたのだが、

「バブル真っ只中の90年2月11日、マイク・タイソン対ジェームス・ダグラスのタイトル戦が東京ドームでありました。観戦のため来日していたトランプ氏は、前日のパーティーで柏木社長と対面しています」(同)

 99年刊行の自叙伝『敗者復活』(日経BP社)には、その模様が記されている。

〈部屋の中を歩いていると、彼(注・柏木社長)が隅に立って壁を見つめ独り言を言っているのに気が付いた。私は彼の方へ歩み寄り肩に腕をゆっくりと回し、マイクと一緒に写真を撮ろうとした。すると、突然気が狂ったように「ノー、ピクチャー! ノー、ピクチャー!」と叫び始め、手で顔を隠し背中を向けた。そして怒って部屋を出て行ってしまった。マイクと私は顔を見合わせ「いったいどうなっているんだ」と言った〉

■「ある犯罪に関係」と

 直後に米国で再会した2人は勝負に臨み、柏木社長が600万ドル(当時約9億円)の勝ちを収めたものの、5月の“再戦”ではトランプ氏が1000万ドル(約15億円)を奪還。その後、

〈柏木氏は日本に戻った。数日後、「ウォールストリート・ジャーナル」の一面に、世界で最も派手なギャンブラーとして彼の記事が掲載された。(中略)その記事は公に出るのを避けてきた彼にとって大災害となった。後になって知ったのだが、柏木氏はある犯罪に関係している人だと評判になっていたのだ。だから彼は以前、マイク・タイソンとの写真撮影を拒否したに違いない〉

 さらに続けて、

〈柏木氏は姿を隠した。そして、ついに姿を表さないまま、日本刀でめった切りにされ、死体となって発見されることになってしまった。犯人は結局捕まっていない〉

 当時、社長の側近だった男性が大勝負を振り返る。

「ニューヨークのケネディ空港から、トランプさんが用意した払い下げの軍用ヘリで現地まで飛びました。プラザでは最上階のVIPルームに泊めて貰い、2メートル近い大男がボディガードについた。45口径のマグナムを所持していて『体内で散弾するから確実に殺せる』と話していたのを覚えています」

 写真を嫌がる理由は、

「税務署を気にして、行動を隠したがっていたのです。社長は、豪州で大勝した時と『ケヤキ御殿』を建てた時の2度、税務署に調べられている。自宅の総工費40億円は全部バカラで稼いだカネだと言っていましたが、調査の時は、廊下に敷いてある1枚70万円のケヤキ板を『ベニヤだ』などと説明して、資産価値は3億円となった。『おかげで安く済んだ』と喜んでいましたね」

 組閣に忙殺される新大統領の胸中には、そんな好敵手の思い出が去来しているやも知れない。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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