ヒトラー「最後の執務室」再現に物議 “ナチス礼賛の象徴に”

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 薄暗く小ぢんまりとした空間には、ソファと、ドイツ紙が無造作に置かれたテーブル。そして壁にはフリードリヒ2世の肖像画。

 10月29日、ドイツの首都ベルリンの博物館内に、ヒトラーの執務室が再現され、物議を醸している。

窒息を防ぐための酸素ボンベ(左)も

 在独特派員の話。

「この執務室は、ヒトラーが総統官邸の中庭に作らせた“総統地下壕”にあったものです。地下壕の内部は約30の部屋に仕切られており、執務室のほかには、浴室や寝室、医務室もありました。ヒトラーは戦況が悪化した1945年1月から生活を始め、4月30日、妻のエヴァ・ブラウンとともに、拳銃自殺を図ったのです」

 実際の地下壕はこの博物館から2キロほど離れた場所にあったが、現在は埋められ、地上部分は駐車場になっている。

「この地下壕がどこにあったかさえ、“ネオナチの聖地になりかねない”との懸念から戦後長らく非公表でした。しかし、戦争の記憶を絶やしてはいけないという流れの下、2006年になってようやく案内板が立てられたほど」(同)

 となれば今回の再現に対するハレーションは必至。

「さるユダヤ人団体は今回の展示を、『悪の正常化だ』と批判しています。また、“ナチス礼賛の象徴になる”という声も市民から上がり、撤去を求める動きが広がりつつあります」(同)

 主催者側はあくまでナチスの恐ろしさを伝えるための展示と主張しているが、

「批判をかわすため、見学者は約90分に及ぶ博物館のガイドツアー参加者に限定。しかもそのうち、執務室の見学はわずか数分という異例の措置をとっています。写真や動画の撮影も禁止です」(現地ガイド)

 過度な制限は、逆に神聖化を加速させそうだが……。

週刊新潮 2016年11月24日号掲載

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