トランプよりマシでも…「ヒラリー大統領」で増加する日本の防衛負担

国際週刊新潮 2016年11月3日号掲載

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 政治経験ゼロの「暴言王」を相手によもやの大苦戦を強いられているヒラリー・クリントン(69)。仮に、米国初の女性大統領の悲願を果たしても、ニッポン経済は「アメリカ・ファースト」の呪縛から逃れられないという。

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 全米はもとより、全世界から熱い視線が注がれたゲーム――。

 大統領選史上最凶の“ジョーカー”ことドナルド・トランプ(70)は、かつての“プッシー発言”が取り沙汰されて自滅へと追い込まれた。実際、米メディアの世論調査でも、元大統領を夫に持つ“クイーン”は、最近までリードし続けていた。

 彼女の名を冠した『ヒラリー・クリントン』(新潮新書)の著者で、日経新聞編集委員の春原剛氏が解説するには、

「トランプは候補者指名争いで、共和党の票田であるテキサス選出のテッド・クルーズ上院議員を罵倒し、同じくフロリダ選出のマルコ・ルビオ上院議員とも険悪になった。一方のヒラリーは、トスアップ(激戦区)のバージニアで州知事を務めた、ティム・ケインを副大統領候補に抜擢。トランプが過半数の選挙人を獲得するのは厳しいと言わざるを得ません」

 社説でヒラリーへの支持を表明した「ニューヨーク・タイムズ」はHP(10月23日時点)で、

〈ヒラリーが勝つ可能性は93%。彼女が負ける確率はNFLのキッカーが30ヤードからのフィールドゴールを外すのと同じ確率だ〉

 と言って憚らなかった。

 NFLの選手が30ヤード(約27メートル)の距離からゴールを外すことはまず有り得ず、事実上の勝利宣言に等しい表現だ。

 ところが、10月28日になり、FBIがヒラリーの私用電子メール問題の調査を再開すると発表。勝負の行方は分からなくなってきている。

ヒラリー大統領誕生となるのか

■トランプとの差は歴然だが…

 かねてよりのトランプ旋風には、我が国の官邸や外務省も戦々恐々としていた。だが、“ヒラリー大統領”の誕生は、本当に日本にとって歓迎すべき結果なのか。

 国際部記者がそのプラス面として挙げるのは、

「ヒラリーが日米同盟の重要性を理解していることです。たとえば、9月に安倍総理が訪米した際、彼女は表敬訪問をしています。同席したのは選対本部長を務めるジョン・ポデスタやカート・キャンベルといった、来るべきヒラリー政権を代表する顔ぶればかり。“首脳会談”さながらのメンバーで臨んだのは、日本を重視するというメッセージに他なりません」

 また、ヒラリーが国務長官だった2010年9月7日、尖閣諸島周辺で違法に操業していた中国漁船が、海上保安庁の巡視船と衝突するという前代未聞の事件が起きたが、

「その直後の23日にヒラリーは当時の前原誠司外相と会談し、“尖閣諸島には(日本への防衛義務を定めた)日米安保条約第5条が適用される”と明言した。日本を“安保タダ乗り”とコキおろしたトランプとの差は歴然としています」(同)

■日本の防衛負担増

 だが、在米ジャーナリストの古森義久氏は、こんな懸念を口にする。

「アメリカでは以前から、日米安保を片務的とする不満がありました。1991年に勃発した湾岸戦争でも、資金だけを提供した日本は“小切手外交”と揶揄された。昨年7月には、民主党のブラッド・シャーマン下院議員までもが、“日米同盟は全くの一方通行だ。日本に防衛負担をもっと増やしてもらうにはどうすればよいか”と発言しています」

 アメリカでは2011年に予算管理法が成立。10年間に亘って、国防費を4870億ドル以上削減する方針を打ち出している。

「オバマにしろ、ヒラリーにしろ、リベラル派の民主党は福祉政策に予算をつけたい。同盟国の負担を増やすべしという考え方はアメリカ国内でも多数派を占めているのです」(同)

 無論、“トランプ大統領”に比べればマシなのは明らかだが、日本の負担増は免れそうにない。

特集「『ヒラリー』新大統領で途方に暮れる『ニッポン経済』」より