【富山市議会問題】実働3カ月で年収1000万円!サラリーマンをナメている「地方議員」の実態

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 雨後の筍のように、次々発覚している富山市議による政務活動費の不正受給。彼らのいい加減さには、開いた口が塞がらないが、元々地方議員はかなりの高給取りである。年収1000万円以上はゴロゴロいて、世のサラリーマンの怒りを買うことは間違いないのだ。

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不正受給の手口は、「架空請求」や「水増し請求」(イメージ)

 そもそも今回の問題、政治アナリストの伊藤惇夫氏に言わせれば、

「町村など小さな自治体は住民との距離が近いので、ある程度コミュニティの中で監視されている、という意識が議員の側にある。一方、国会議員はマスコミを通じて世間に注目されるので監視されやすい。しかし、都道府県、政令指定都市、(人口20万人以上の)中核市の議員は、盲点になりがち。不正を生みやすい土壌があるのです」

 富山市は人口約42万人。市議(定数40)にも驕りがあったようである。

 政務活動費(以下、政活費)は、給料とは別に調査研究等のために支給されるもの。だが、実際は杜撰な使われ方をしていることが多いため、「第二の報酬」と批判されてきた。富山市議の場合、これまで発覚した不正受給(2011年~15年)は約3300万円。政活費は、富山市議会では1議員につき月15万円。1会派に月15万~45万円支払われる。過去5年間の全支給額は3億2307万円だから、実に約1割が不正に使用されたことになる。

■政活費を使い切る“習慣”

 その手口は、白紙の領収書を使用して開催してもいない市政報告会の会場費や、購入額以上の書籍代や菓子代を請求する「架空請求」や「水増し請求」だった。10月10日までに辞職した市議は計12名で、その多くは自民党会派の議員。2名が市から刑事告発された。

 不正が発覚してから「一番多い日で100件の抗議電話とメールがあった」(富山市議会事務局)とかで、市民も怒り心頭である。

 現役の富山市議は言う。

「自民、公明、民進系の民政クラブなどは、政活費を使い切るのが長い間習慣になっていて、一種の“伝統芸”のようになっていた」

 富山市議の月額報酬は60万円だが、

「元々、市議の中から60万円では足りないという意見が出て、議会は今年6月に10万円増額することを決めました。ただ、こういうご時世では、世間一般からはそう簡単に受け入れられない。そこで、地元のマスコミが情報公開請求を行い、政活費の領収書のコピーを取り寄せ分析。その結果、不正が発覚したのです」(同)

 政活費の使い方はデタラメ、そんな連中の給料を上げる必要はないということになる。もっとも、先の市議はこう言う。

「政活費の不正受給で辞職した議員は、もれなく超高級車に乗っている人たちです。その上、会社役員や団体役員を兼業している人も少なくありません。政活費を誤魔化さなきゃいけないくらい困窮していたかは甚だ疑問です」

■年収1000万円以上がゴロゴロ

 では、都道府県、政令市、中核市の議員の年収を検証してみる。総務省や全国市議会議長会などの資料を基に計算すると、都道府県議の月額報酬の平均は約81万円。ボーナスは各自治体でまちまちだが、3~5カ月分程度支給され、年収にすれば1200万円から1700万円程度になる。

 20ある政令市の市議なら月額報酬の平均は101万円、ボーナスは338万円で年収にすれば平均1550万円。47ある中核市は月額報酬62万円、ボーナスは270万円で年収1020万円となる。

 富山市議の場合、月額報酬は60万円。ボーナスは約4・5カ月分で、年収にすれば989万7000円。さらに月15万円の政活費を含めると、1169万円になる。

 富山県の一人あたりの県民所得は約316万円。全国平均は約307万円である。年収1000万円以上の高給取りがゴロゴロいる都市部の地方議員は何とも羨ましいかぎりだが、

「地方議会の会期は、国会議員と比べると、かなり短いです」

 と解説するのは、先の伊藤氏。

「国会議員は通常国会150日に加えて、臨時国会もあるので、年間約200日は働くことになります。一方、地方議員は、100日にも満たない。会合などに行くことがあるとはいえ、基本的に暇でしょう」

■富山は年間69日

 実際、都道府県議会の平均会期日数は85・11日。市区議会は78・6日。町村議会は43・9日である。富山市議会に至っては69日だという。

「加えて、地方議会は、本来の二元代表制が意義を失っているという問題を抱えています。首長の提案に対して、議会は90%以上賛成しているというデータもある。議員提案による政策条例も全国的にほとんどありません」(同)

 本来、二元代表制が機能するには、「首長vs議会」という構図がなければならない。しかし、今の地方議会には両者の間に緊張感がないのだ。

「議会の本来の役割からすると、これは有り得ない事態です。地方議員は、高い報酬を貰っているにもかかわらず、仕事をしていないと指摘されても仕方ありません」(同)

 大した仕事をしていないのに高給では、世のサラリーマン諸氏は納得がいかない。

特集「実働3カ月で年収1000万円がゴロゴロ! しかも兼業可! 『地方議員』はサラリーマンをナメている!!」より

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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