北方領土の“共同統治案”、真偽の程は 日経報道

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 日露で北方領土を「共同統治」――まるで世界史の教科書に出てくるような単語が、17日付の日経新聞朝刊1面の見出しを飾った。

 外務省担当記者の話。

「先月23日には読売新聞が1面で、政府が2島返還を最低条件にしていると報じましたが、ご存じの通り読売は安倍政権に近いメディア。『どうせ官邸があげた観測気球だろう』とあまり話題になりませんでした。しかし今回はあまりにも突飛すぎる。関係者に与えたインパクトは段違いでした」

どうなる北方領土問題(イメージ)

 可能性はあるのか。ロシア情勢に詳しい拓殖大学教授の名越健郎氏の解説。

「共同統治と言いますが、要は新しい国を一つ作ること。成功例は世界的に見てもほとんどない。さらに北方4島は、ロシア本土以上に治安が悪い。麻薬取引の場になっている他、軍から横流しされた銃火器を市民が所有していて、それを使った犯罪も横行している。取り締まる筈の警察は賄賂でいかようにも動く。日本の警察と共同で治安を維持していけるとは到底考えられず、実現の可能性は低い」

 作家の佐藤優氏によると、

「実現の可能性はさておき、官邸がこうした検討をしているのは事実だと思います。これまでロシア政府は一貫して歯舞群島、色丹島の2島返還での決着を求め続けています。これに対し日本政府は4島一括返還を主張し、平行線が続いている。しかし、歴史に名を残したい安倍総理は次の日露会談でロシア案を呑み、平和条約締結を急ごうとしている。その際、未返還となる2島の返還に含みを持たすため、共同統治案を持ちかけているわけです。この官邸の動きを牽制する目的で、外務省がリークしたのでしょう」

 打ち上げ場所が違うにせよ、今回の記事も観測気球だったというわけだ。

週刊新潮 2016年10月27日号掲載

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