実は誰でもアクセスできる! ロシア大統領府から日本へのメッセージ 佐藤優が解説

国際

  • 共有
  • ブックマーク

 連日盛り上がったソチ・オリンピック、パラリンピック。そして、ウクライナの政権崩壊からロシア編入へ一気に進んだクリミア情勢など、このところロシアがニュースを頻繁に賑わしている。日ロ間には、北方領土交渉をはじめ懸案も多いが、しかし、ロシア語などまるで読めないふつうの日本人にとって、この国が考えることを直接知る機会は少ない。

 作家の佐藤優氏は、先頃、海外駐在中の不法蓄財の実態 や、行き過ぎた出世主義がもたらす特異な勤務ぶりなど、外務官僚の実態を告発した文庫本『外務省に告ぐ』を刊行した。そのなかで、氏はロシアの公的な主張に触れるための一番簡単な方法を教えてくれる。それは国営放送「ロシアの声」の日本語版を定期的にチェックすることだ。かつてのモスクワ放送といえば、ピンと来る方もいるかもしれない。佐藤氏によると、ここには、クレムリン(ロシア大統領府)から日本国民向けへのメッセージが隠されていることが多いという。

■ロシアの北方4島政策は予告されていた

クレムリン(ロシア大統領府)から日本国民向けへのメッセージが隠されている「ロシアの声」日本語版HP

 例えば、日本の北方領土問題への関心の高まった2010年10月、「ロシアの声」は〈(ロシア)国民に対する日本政府の行動は内政問題と捉えることができるだろう〉と日本の世論を牽制する論評を掲載した。そして、その数日後、当時のメドベージェフ大統領は現役の国家元首としてはじめて国後島を訪問し、日本国内に大きな衝撃が走った。

 日ロ間で、係争地と合意されていた北方4島に、ロシア大統領が入れば、住民向けにロシアの領土だと必ず宣言せねばならない。ロシアはそれを見越していたからこそ、内政問題に干渉せぬように、というメッセージを事前に日本に送ったのだった。実際、訪問が生んだ現状維持効果は、実効支配中のロシアに有利に働いた。日本は記事が出たときその真意を読み取り、あらゆる外交ルートを使って訪問を阻止せねばならなかった、と分析する。

 そのうえで、佐藤氏は、核心的な情報は、いつでも秘密裏に取り交わされるわけではないと言う。誰もがアクセスできる情報のなかにも重要情報は存在するのだ。

■日露戦争への疑義や「美しすぎる女性検事長」についても

 実際に「ロシアの声」のHPを見ると、政治から文化、スポーツに至るまでロシア関連の話題が網羅されており、その充実ぶりに驚く。日本人が歴史上の定説と認識する、北方領土の日本人の先住や、日露戦争の結果にさえ疑義が唱えられている。それはプロパガンダには違いない。でも、ロシアはロシアでまっとうに自らの国益を主張している印象もある。クリミアの「美しすぎる女性検事総長」の話題などソフトな内容も交え、バラエティに富む。なにより日本語がネイティブと遜色ないレベルで、とても読みやすい。

 その主張の是非については、もちろん個々で考え判断するほかない。ただ、とかく内向きのナショナリズムを刺激する情報が過熱しがちな現在、いつものネットニュースを離れてこんな情報に触れるのも、視点を多様化・複眼化させるうえで悪くないことかもしれない。佐藤優氏が外務省で培ってきた、何気ない情報から深層を読み解く視点はその一助になることだろう。

デイリー新潮編集部