山本幸三地方創生相に更なる疑惑…警視庁捜査の事件に関係、失踪者も

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 アベノミクスの仕掛け人として、山本幸三地方創生相(68)は鳴り物入りで、初入閣を果たした。だが、本誌(「週刊新潮」)が“疑惑の国会質問”を報じてからはキナ臭い話が次々に浮かび上がり、遂には失踪者が出ている事件にも絡んでいることが判明。まさに、真っ黒大臣なのだ。

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“お友だち内閣”の一角が崩れるのは、この人からに違いない。

 政治部記者が解説する。

「10月3日の衆院予算委員会で、山本地方創生相は民進党の大西健介議員から“疑惑の国会質問”を追及され、釈明に追われました。筋金入りの“リフレ派”で、アベノミクス応援団の団長として初入閣を果たしましたが、さらなるスキャンダルが飛び出せば、さすがに安倍官邸もクビを切らざるを得ない状況です」

“疑惑の国会質問”とは、国会議員としての職務権限を濫用し、自身への利益誘導を図ったのではないのかと、本誌(9月8日号)が報じた問題である。

 2012年3月5日の衆院予算委員会第一分科会で、山本地方創生相は、

〈こういう調査のやり方しかできない監視委員会というのはある意味で本当に必要なのか〉

 などと、その半年前から“日興インサイダー事件”を調査中だったSESC(証券取引等監視委員会)を糾弾した。

 事件の構図は、日興コーディアル証券の元執行役員、吉岡宏芳被告=上告中=が横浜市の金融業者に融資先を斡旋し、そのほとんどが焦げ付いた埋め合わせに、インサイダー情報を漏洩したというもの。融資先の一つが、榊原康寛という人物で、借り入れた2億円のうちの5000万円を使って、「ブルーエコノミー・ホールディングス」を設立している。問われるのは、その会社の代表が山本地方創生相だったことである。

 つまり、SESCを牽制する国会質問をすることで、ビジネスパートナーに助け舟を出し、挙げ句、自らが代表を務める会社への利益誘導を図ったと見られても仕方がないのだ。

■小切手を担保に資金調達

東京都運送施設事業協同組合

 しかも、これら一連の資金の流れにはSESCだけでなく、警視庁も捜査に乗り出していたのである。

 警視庁関係者によれば、

「『ブルー』社を起ち上げた榊原オーナーは、『東京都運送施設事業協同組合』の土地取得の手付金名目で、横浜市の金融業者から2億円を借り入れていました。実は、その組合の元代表理事が10年の春、背任・横領などの容疑で、湾岸署に刑事告訴されているのです」

 一体、なぜなのか。

 組合の秋山宏之・現代表理事が明かす。

「その発端は、元代表理事が千葉県市川市の土地を売却し、代替地として江東区新木場の土地を手に入れたことでした。売却した土地で、のちに土壌汚染が見つかったりして、明け渡しが遅れ、莫大な違約金を請求されたのです。そのとき、組合の事務長として入り込んでいたある金融ブローカーが、三井住友銀行から8億円の融資が受けられるという話を持ち込んできました」

 驚くのは、三井住友銀行の融資窓口が日興コーディアル証券に出向前の吉岡被告だったということである。

「8億円の融資を受けたはいいが、返済のメドは立ちませんでした。すると、今度は、金融ブローカーが小切手を担保に資金調達をすると提案してきた。元代表理事は、金融ブローカーの“決済には回さないから”という言葉を信用し、二十数枚の小切手約1億4000万円分を振り出した。そのうちの1枚が09年12月4日、不渡りになるのです」(同)

 当然、組合は倒産の危機に陥ったという。

■大儲けできる土地転売

 そこに、偶然では済まされない人物が救世主として現れる。「ブルー」社のオーナーであり、山本地方創生相のビジネスパートナーでもある榊原氏だ。

「榊原さんは、1億円を用立ててくれれば小切手が回収できると持ちかけてきました。でも、組合ではそれを準備できず、市川市の別の土地や新木場の土地を榊原さんに売り渡し、その手付金の1億円で、小切手の回収を依頼することになったのです」(同)

 不動産売買の契約書は、暮れも押し迫った12月25日に交わされた。

「その場に、榊原さんは“小切手は1億円と引き換えに返還する”という金融ブローカーの合意書を携えていました。ただ、小切手の返還日は翌年2月10日なのに、金融ブローカーへの支払いは売買契約当日の12月25日。1億円を先払いするのは絶対に小切手が返ってくる確証がなければできないはず。その辺りから、最初から彼らはグルではないかと疑いを持ちました」(同)

 とはいえ、すでに後戻りできなかったという。

「土地の資産価値は30億円以上でした。しかし、榊原さんに小切手を回収してもらわねばならなかったため、銀行への借金返済と組合員への出資金を戻せるだけのギリギリの金額である約25億円で契約をするしかありませんでした。榊原さんは転売さえすれば、大儲けすることができた。事実、最初の取引である市川市の土地は組合から約8億円で入手し、約15億円で売却していました」(同)

 ところが、続く新木場の土地取引になると、“土壌汚染が見つかったから、その分、値段を引き下げろ”などとごね始めたという。終いには、急に資金繰りが悪化したのか、いくら催促しても決済の場に姿を現さなくなった。

 そのため、組合は契約不履行で裁判を起こし、榊原氏側には違約金約1億7000万円の支払いが言い渡されたものの、それすら踏み倒されたままなのだ。

■捜査のターゲットと“失踪”

 一方で、湾岸署の捜査はどのように進められていたのか。

 警視庁関係者が続ける。

「小切手を乱発した元代表理事だけでなく、それを唆した金融ブローカーや最初からグルだったと見られる『ブルー』社の榊原オーナーも、背任・横領の共犯、あるいは詐欺の疑いで、捜査のターゲットになっていました」

 山本地方創生相による“疑惑の国会質問”が行われたのは、その最中だった。

「直接的には、SESCに圧力をかけ、インサイダー取引の摘発を阻止するという目論見があったのかもしれない。しかし、それだけでなく、インサイダー取引の摘発が湾岸署の捜査にも波及し、ビジネスパートナーまで追われる立場になることを食い止めたかったのではないかと見ているのです」(同)

 結果として、“疑惑の国会質問”は奏功することなく、SESCの告発を受けた横浜地検が“日興インサイダー事件”を摘発している。

 にもかかわらず、湾岸署では未だ、“小切手乱発事件”の逮捕者が出ていないのはなぜなのか。

「肝心の元代表理事が失踪し、現在、捜査をストップせざるを得ない状況に置かれているからです。そのため、背任・横領、詐欺まがいの取引をやってのける連中と山本大臣とのかかわりも暴かれていないのです」(同)

 要するに、“疑惑の国会質問”には、二重の意味合いがあったわけである。山本地方創生相はこれについて、失踪中の元代表理事は知らない旨を回答した。

特集「失踪者も判明で安倍内閣の真っ黒大臣『山本幸三』地方創生相がワルい!」より

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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