102歳・笹本恒子さんに“写真界のアカデミー賞”! マッカーサーに撮り直しのお願いも

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 日本初の女性報道写真家・笹本恒子さんが、“写真界のアカデミー賞”として知られる「ルーシー賞」を受賞することとなった。今年で102歳を迎えた笹本さんの、生涯にわたる写真界への貢献が受賞理由である。授賞式は10月23日に、米国ニューヨークのカーネギーホールで行われる予定だ。

笹本恒子さん

 笹本さんが写真の道を志したのは、25歳のときだった。戦中から戦後にかけ数々の歴史的な出来事に遭遇してきた笹本さんは、まさに怒濤の時代を撮り続けた。それらのエピソードを著書『ライカでショット!―私が歩んだ道と時代―』(新潮文庫)にまとめている。

■マッカーサーに“撮り直し”

 同書では、数々の歴史的な出来事が紹介される。例えば、東京・丸の内で開催された戦後初のシルクフェアーでは、マッカーサー元帥の撮影に立ち会った。

〈マッカーサー夫妻のテープカット、各社カメラマンと並んで撮(うつ)したが、私のフラッシュバルブは発光しなかった。代わりの場面を撮そうと、会場に彼等を追って行った私は、豪華な絹織物を前に「ここで写真を撮らせてくださいませんか」と、声をかけた。二人は立ち止まり、マッカーサー夫人は織物に手をかけ、ポーズをとってくれた。

 その後で、新聞社の人から、天皇陛下とマッカーサー夫妻には、声をかけたり、ポーズを要求することはご法度(はっと)だといわれて驚いた〉※〈〉は本文より引用、以下同

■「恐れ入りますが…」

 また、戦中、ヒットラー・ユーゲント(ヒトラー青年隊)が来日し、農園見学を行った際のエピソードも。一行が畑小屋でふかし芋を食べるという絶好のシャッターチャンスが訪れたが、笹本さんら各社カメラマンはフラッシュの装備をしておらず、屋内を撮影することができなかった。

 そこで笹本さんは一計を案じる。

〈思い余った私は、小屋の入り口に行き団長に向かって、英語で頼んだ。

「恐れ入りますが、写真を撮したいので、小屋の外で召し上がってくださいませんか」

 団長は素直にうなずくと、傍らの青年にふかし芋のざるを持たせ、小屋の外に出てきた。冗談を交え、おどけた表情で、さつまいもを口に運ぶ団長たちの姿に、各社のカメラマンは、いっせいにシャッターの雨を降らせた〉

 波瀾万丈の102年間を歩んできた笹本さんは、「今なお現役」と語る。日本でも来年4月に「笹本恒子写真賞」が創設されるという。

デイリー新潮編集部

2016年10月22日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。