“豊洲の魚は危ない”キャンペーンで何が起きるか

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 すべての鮮魚の輸送路は築地に通ず。その盛況ぶりは移転先の新市場でも再現できるのか。「豊洲の汚染された魚を食べさせるつもり?」――。目下、東京都には主婦からのこうした非難の声が殺到しているという。連日連夜、新聞、テレビが土壌汚染の危機を煽るのだから、無理もあるまい。東日本大震災時の風評被害が思い起こされるが、豊洲移転が成ったら成ったで、一体何が起こるのか。

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「豊洲の鮮魚はあぶない」と主婦に刷り込んで何が起きるか?

 都内のスーパーに並ぶ鮮魚の6~7割は築地から仕入れられたものだという。魚食文化の恵みは“築地の賜物”と言う他ないが、

「豊洲市場が開場したら、今より魚の売上げは激減すると危惧しています」

 と不安気に語るのは、チェーン展開しているスーパーの仕入れ担当者だ。

「主婦たちの頭には、豊洲の鮮魚=汚染魚のイメージがすでに刷り込まれていますから、これを払拭するのは並大抵のことではありません。それなら豊洲での買い付けはやめ、大田市場など他の市場へのシフトか、地方の漁港から産地直送で仕入れ、店頭告知で“安心・安全”をアピールしようかと考えているところです」

 こうした小売店の思いは築地市場関係者にも伝わっている。30年近く当地で仲卸業者として働く男性は危機感を露わにする。

「そもそも近年、量販店による産地や商社からの直接買い付けが増え、築地の取扱量や販売額は、90年頃のピーク時と比べ、6割ほどに落ち込んでいます。しかもここ数年、日本人の肉の消費量は横ばいなのに、魚離れはどんどん進み、市場のパイそのものがシュリンクしている。豊洲に移転したら、さらに客足が遠のくのは目に見えており、深刻に受け止めています」

 長年、築地に通う寿司店経営者も嘆く。

「うちの常連客でも豊洲に不安を感じている人は多いんですよ。入り口に“当店の魚は焼津港からの産地直送です”なんて断り書きを貼って、安全を謳わないといけないかもしれないね」

 あるいは主婦たちもネット通販で自ら産直の魚を購入するのが、当たり前の時代が来るやもしれぬ。

「税金還付を狙って、魚介類の特産品がお礼の品になっている自治体へのふるさと納税が激増する可能性もありますね」(経済部記者)

 ちなみに湾岸のブランド力で過熱気味に高騰していた豊洲のタワーマンションなども資産価値が3割がた目減りすると見られている。

 森永卓郎氏はこう語る。

「メディアが科学的根拠のない危険キャンペーンを行ったのですから、風評が落ち着くのを待つしかありません。ここで豊洲移転を急いで強行すれば、数百億円レベルで風評被害が発生する危険性があります」

「特集 どんどん湧き出る『アルカリ地下水』と疑問点 イースター島より不思議な豊洲アイランド! バカな話が多すぎる『豊洲のパンドラ』10の疑問」より

週刊新潮 2016年10月6日号掲載

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