“生きて届く乳酸菌”は必須? 塩分過多の漬物は食べるべき? ドクター秋津がジャッジ! 健康長寿の新常識

食・暮らし週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号掲載

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総合内科医、秋津壽男医師(62)

 総合内科医の秋津壽男(としお)医師(62)が、二者択一の設問を通じて、長寿の新常識を指し示す。今回取りあげるのは“乳酸菌”にまつわる疑問だ。

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 よく医食同源と言います。第3の設問からは、病気知らずの強い体を作るための「食」にこだわり、日々、新しくなる常識を紹介しましょう。そのトップバッターはヨーグルトです。

 今や、「腸内フローラ」という言葉をご存じない方はまずいないでしょう。人間の免疫細胞の60%以上は腸に存在することが分かってきました。そのため、医療シーンでは腸内環境の改善による免疫力アップと、感染症やがんなどの病気予防に熱視線が集まり、一大ブームとなっているのです。

 人間の腸内には100兆個ともいわれる細菌が住んでいます。多様な菌が仲間同士で集団を作る姿が「お花畑」(=flora・フローラ)に似ていることから、この名がつけられました。

 腸内細菌を大別すると、身体に有用な「善玉菌」、有害物質を生む「悪玉菌」、優勢な方に味方する「日和見菌」の3種がある。理想の割合は、善玉2割、悪玉1割、日和見7割とされます。

 腸内フローラの改善には乳酸菌を含むヨーグルトの摂取が一番です。なぜなら、善玉菌は乳酸菌を食べて活発化するからです。

 そこでどのヨーグルトを選ぶかですが、スーパーやコンビニの棚には目移りするほど数多の商品が並んでいる。ここで気づくのが、メーカーがやたら「生きて腸まで届く」乳酸菌をアピールしている点。確かに乳酸菌の多くは消化器官を通る時に、胃酸などで死滅してしまいます。どの商品が最も多量の乳酸菌を腸まで運んでくれるのか、素人には分からず、悩んでしまう。しかし次に挙げる設問は、そうした懊悩には意味がないことを教えてくれます。

■【Q3 ヨーグルトは「生きて腸まで届く」乳酸菌が必須?】

ヨーグルト選びにも一苦労

 確かに「生きて腸まで届く」利点を謳っている商品とそうでないものを比べると、後者の乳酸菌の方が胃酸で死ぬ率が高いかもしれません。しかし、100%死んでしまうということはない。1%でも、たとえ0・1%でも生き残って、腸に到達できれば良いのです。なにしろ元の数は1000億という単位。このうち1万分の1でも腸に届けば充分で、すぐに100万倍に増殖していきます。

 こうして爆発的に増殖した乳酸菌が善玉菌の栄養源となり、逆に悪玉菌のエネルギー源である糖やタンパク質を奪ってくれる。しかも途中で死んでしまった乳酸菌も他の乳酸菌のエサとなります。乳酸菌は死骸になっても、充分役に立っており、そのパワーは生死を問わない。つまり、メーカーの宣伝を鵜呑みにし、「乳酸菌が生きたまま腸に届くヨーグルト」でなければ効果がないと考えるのは、ナンセンスというわけです。

 乳酸菌と言えば、動物性ではなく、日本発・植物性の乳酸菌を含む食べ物についても言及しておきましょう。

■【Q4 塩分過多で「日本人の心」漬物を食卓から追放すべきか】

生野菜にないメリットとは

 漬物で、まず思い浮かぶのは、高い塩分です。昔は家庭で漬物を漬ける風景が当たり前のように見られましたが、昨今は高血圧を招き、動脈硬化や脳卒中の原因となることから、敬遠されがちで、食卓から消えていく運命にあるように見えます。しかし漬物には、生野菜にないメリットがあるので、全否定するのは惜しい。ぬか漬けなら、乳酸菌とビタミンが実に豊富。高菜漬けや野沢菜漬けは、ミネラル分が生より多いと言われる。

 そもそも漬物の塩分が高いのは、今のように冷蔵庫が普及していない時代、塩漬けにして腐らないようにした保存食だったためです。

 どうしても塩分が心配なら、自宅で減塩の漬物を作れば良い。自家製のぬか漬けなら、まず半日でぬか床から出してしまいましょう。半生といった味わいですが、乳酸菌の効能はこれでも充分です。乳酸菌重視なら塩麹もお勧め。水で薄めて野菜を漬ければ、減塩麹漬けとなります。

 浅漬けは、私の場合、カツオ出汁に野菜を入れ、これにハサミで細かく切った昆布を混ぜて終わりです。実は昆布には相当な塩分が含まれている。重石を乗せて冷蔵庫で1日漬ければ、昆布のぬめりが糸を引きます。これは「フコイダン」と呼ばれる水溶性食物繊維で、高血圧改善が期待できる。昆布のミネラルもしっかり含まれています。しかもドレッシングをかけた野菜サラダより塩分が少ないのです。

特集「『ドクター秋津』がジャッジ! 健康長寿の『新常識10』――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)」より

秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)