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韓国・北朝鮮

北朝鮮の核弾頭小型化 “ブースト型原爆”と“ノドン”の脅威

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週刊新潮 2017年5月4・11ゴールデンウィーク特大号 
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 金正恩はまともな外交交渉はできないからか、正気の沙汰とは思えない強硬路線を突き進む。9月9日、通算5度目の核実験を強行し、「核弾頭の小型化に成功した」と宣言した北朝鮮。今や日本にとって、かの国の核弾頭小型化は最大の脅威に成長したのである。

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満面の笑みを浮かべる金正恩

 核実験の第一報を聞いた後、ある政府高官はこんな不安を口にした。

「今度の実験は、政治的パフォーマンスとは明らかに違うだろう。あれだけ正確にミサイルを3発撃った直後の核実験だ。ミサイルに核を搭載することは十分に考えられる」

 この言葉の真意は、後ほど解説するとして、今回の実験は過去4回と同様、北朝鮮北東部・豊渓里(プンゲリ)にある実験場で行われた。

 爆発の規模は少なくとも10キロトン以上で、過去最大規模。威力は「広島型」に匹敵するという。

 そして最も注目すべきは、北朝鮮が実験後「小型化、軽量化した核弾頭を必要なだけ生産できるようになった」などと宣言したことである。

■「ブースト型原爆」

 だが、北朝鮮という国は平気でウソをつく。この宣言を額面通りには信じられないが、

「私は以前から、北朝鮮による核兵器の小型化・弾頭化はかなり進んでいると指摘してきました」

 と話すのは、元航空自衛官で軍事ジャーナリストの潮匡人氏。

「他の核保有国の例を見ても、3~5回の実験で核弾頭化技術を獲得しています。北の核実験は今回で5度目ですし、これまでの実験の内容や当局の発表を見る限り、小型化がハッタリだと判断する根拠はありません。小型化した核爆弾をミサイルの弾頭に搭載できても、実戦運用する技術が確立していない可能性がある。ですが、それが完成するのに2年はかからない。遅くとも来年には手にすると考えるべきです」

 今回の爆発は、ウラン型やプルトニウム型といった通常の原爆ではなく、「ブースト型原爆」と呼ばれる兵器によるものと言われる。

「ブースト型とは、原爆と水爆の中間のようなものと考えてください。原子核の核分裂に伴うエネルギーを利用する原爆に対し、水爆は三重水素(トリチウム)などの原子核の核融合エネルギーを利用します。その威力は原爆の1000倍とも言われ、まさに最終兵器です。核融合を起こすには、1億度もの熱が必要なため、起爆に原爆を使う。一方、ブースト型原爆は、通常の原爆の中にトリチウムなどの核融合物質を組み込むことで、ウランやプルトニウムの核分裂を促進させ、威力を増強するものです」(同)

 現在、殆どの核保有国の主力兵器は、このブースト型だという。その理由は、

「水爆は構造上小型化が難しく、よほどの大型ミサイルでないと搭載できません。それに対し、ブースト型は同じ大きさで通常の原爆より威力が強いので、使い勝手が良いのです。例えば、今度の実験で使われた爆弾の威力は、少なくとも10キロトン以上と言われています。広島に投下されたウラン型原爆『リトルボーイ』の威力が15キロトンですから、ほぼ同じと言えます。しかし、リトルボーイは重すぎて、とてもミサイルの弾頭になりません。つまり、ミサイルの弾頭くらいまで小型化しても、なお広島くらいの都市を1発で壊滅させる破壊力があるのです」(同)

 今回の爆発の威力を30キロトンと推定する学者もいる。その場合は、広島の原爆の2倍の威力になる。当時、広島では20万人の死者が出た。人口密集地帯に今回のブースト型原爆が落ちたら、50万人、100万人の死者が出てもおかしくないのだ。

■ノドンの精度

 また、北朝鮮の軍事事情に詳しい聖学院大学の宮本悟政治経済学部教授は、

「核ミサイルは都市に直撃させなくても、上空で爆発させるだけで凄まじい被害をもたらします」

 として、こう語る。

「これは『高高度電磁パルス攻撃』と呼ぶのですが、例えば東京上空40キロで核爆弾を爆発させた場合、強烈な電磁パルスが発生し、辺り一帯の電子機器は短時間で使用不能になる。付近を飛行中の飛行機の多くは墜落すると言われています。地上では信号機が突然消え、交通事故や火災が起こり多数の死者が出る。大都市はパニック状態に陥るでしょう」

2016年9月5日に行われた弾道ミサイル発射風景

 現在、北朝鮮が保有するミサイルのうち、日本攻撃に使われる可能性が高いのは、スカッド、ノドン、ムスダンの3種類。このうちスカッドは日本全域に届くわけでもないし、ムスダンは本来は射程が長く、グアムの米軍基地を目標にしたものと言われている。とすれば、実際、使用されるのは、射程距離1300キロのノドンである。

 今回の核実験に先立つ今月5日、北朝鮮はミサイル発射実験を行った。北海道奥尻島西方約250キロの海上に3発のミサイルが着弾したが、

「これは、ノドンだったとの見方が有力です」

 とは、元自衛官で北朝鮮情報を担当していた軍事ジャーナリストの宮田敦司氏。

「以前、ノドンの精度は誤差半径2キロ圏内とされていた。簡単に言えば、国会議事堂を狙って撃てば、山手線の内側に落ちるかどうかだった。ところが、現在は190メートル圏内にまで向上したと言われています。これくらいまで精度が上がると、実戦でも十分に使えます。たとえ、弾頭が核でなかったとしても、日本にとっては大きな脅威となります」

 冒頭、ご紹介した政府高官の発言は、5日のノドンの発射実験をふまえて出たもの。核弾頭を搭載した精度の高いミサイルが、日本に飛んでくることを恐れているのだ。

特集「最大の脅威に成長した『北朝鮮』核弾頭小型化」より

  • 週刊新潮
  • 2016年9月22日菊咲月増大号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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