「エビジョンイル」が相撲協会評議員に復帰 八角体制の論功行賞か

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“土俵外のガチンコ対決”として注目された日本相撲協会の理事長選が行われたのは、3月28日のことだった。協会改革を唱えた貴乃花親方は敗北し、あらためて八角理事長体制が確立したわけだが、先ごろ見過ごせない人事があった。他ならぬあの“ドン”が、再び協会入りしていたのだ。

 相撲担当記者が解説する。

「大方の予想に反し、6対2という大差で敗れた貴乃花親方と支持勢力は、完全に執行部からパージされる格好となり、八角体制は盤石となりました」

 そこに、力強い“援軍”が加わったという。

「協会の理事は2年に1度、『理事候補選』で選出され、最終的には評議員会によって承認されます。名誉職とはいえ彼ら評議員は、理事会の提案を承認する最高決定権を持つわけですが、この評議員の職に、8月からNHKの海老沢勝二元会長が就いているのです」(同)

八角体制の“番人”海老沢勝二元会長(左)と論功行賞を与えた八角理事長(右)

 7年半にわたって公共放送のトップに君臨し、その手法から「エビジョンイル」と称された当人は、12年から今年3月まで協会の外部理事を務めたのち、退任。それがわずか5カ月で復帰というわけだ。

 話は、昨年暮れに遡る。北の湖理事長の急死から1カ月後、12月18日に開かれた理事会では、正式に新理事長を選ぶかどうかについて議論が交わされていた。事情を知る親方によれば、

「海老沢さんら3人の外部理事はそれまで『任期切れの3月には選び直すのだから、代行のままで』との考えだとされていましたが、11人による表決では結局、6対5で新理事長を選ぶことに決まり、協会ナンバー2で代行を務めていた八角親方が選出された。この『6票』には、外部理事で唯一、考えを変えた海老沢さんも含まれていました」

 つまりはその1票で八角理事長が誕生し、前述のように3月にも引き続き選ばれる運びとなったのである。

■「勘繰りだよ」

 先の親方が続ける。

「評議員の1人である元日経新聞社長の鶴田卓彦さんが6月30日付で退任を申し出たのを受け、後任を決めるため8月9日に評議員会が開かれ、すんなり海老沢さんに決まりました。そのため、これは明らかな八角体制誕生の『論功行賞』だと見られています。実際、12月に反対に回った2人の外部理事には今回、何の打診もありませんでした」

 八角理事長による協会の“私物化”についてはこれまで本誌(「週刊新潮」)でも報じてきたが、

「八角さんは執行部はもちろん、理事たちの目付け役である評議員にも、自身と気脈を通じ、かつ多方面にパイプを持つ海老沢さんを据えることで、より強固な体制を築きたかったのです」(同)

 かつて強権辣腕で鳴らしながら、八角体制の“番人”に転じた元会長に尋ねると、

「12月の理事会で『八角さんが理事長によいか』と聞かれて賛成に手を挙げたけれど、お礼も言われてないし、それで俺を評議員にしたって言うのは勘繰りだよ。みんなで決めるものだろう。俺は選ばれた側なんだから、理由は協会に聞いてくれよ」

 で、協会に尋ねると、

「(選任の経緯については)回答いたしません」(広報部)

 八角理事長は就任後の4月にインタビューで、

〈伝統を守りつつ、改革すべきところはする〉

 そう答えていた。守りたいのは、伝統よりわが身の末長い安泰であろう。

「ワイド特集 何者!! 何様!!」より

週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号掲載

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