日本に住み着く中国人、80万人超えも時間の問題 爆増する「在留中国人」の裏技(1)

中国週刊新潮 2016年6月23日号掲載

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「住めば都」とは言うものの、中国人にとって日本は、祖国に比べウン十倍も住みやすい国のはずである。おかげで、最近日本に住みつく中国人が爆増中。ライターの前端紀嬉氏が、手を替え品を替え在留資格を取ろうとする彼らの驚くべき実態をレポートする。

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爆買いだけではなく、日本に住む中国人が爆増中

 今や年間2000万人を超えた訪日外国人の4人に1人は中国人といわれる。彼らが百貨店で「爆買い」する光景も見慣れたものになった。だが、近頃、観光客ではない、日本に住む中国人がどんどん増えていることを御存知だろうか。

 最近の在日中国人向けフリーペーパーには、関東近郊のお寺で墓石代と永代供養料など、全て込々で55万円なんていう広告が出されている。つまり、“終の棲家”に日本を選ぶ中国人を当て込むほど、中国人が増えているのだ。

 実際、中国人在留者数は、すでに朝鮮・韓国人を凌駕している。1位となった2007年は60万6889人(朝鮮・韓国人は59万3489人)。2014年6月には72万1097人に到達。在留外国人の総数が268万8288人と過去最高に達した昨年末、中国人在留者数は78万5982人(朝鮮・韓国人は55万3073人)を記録し、80万人を超えるのは時間の問題だ。

 外国人が日本に滞在するには、滞在目的を定めた在留資格が要る。活動内容に基づく「公用」「留学」「興行」「医療」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」や、身分や地位に基づく「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」など、全部で27ある。

 中国人在留者の中で最も多い在留資格が、唯一、滞在期間と就労活動に制限がない「永住者」。昨年末で22万5605人と在留者全体の28・7%を占める。

 自由度が最も高い「永住者」は、外国籍ではあるものの、銀行ローンが借りられるなど日本国籍に準じる安定した身分である。

 また「永住者」と混同しがちだが、日本で自由に活動するには、「帰化」という方法もある。母国の国籍を捨て、日本国籍を取得し、日本人としての法的な権利を有し義務を負う。罪を犯せばムショ行きはあるが、強制退去で日本を追い出されることはない。

 日本で帰化制度が始まった1952年から昨年までで、帰化者の累計総数は53万846人を数える。そのうち中国人の帰化者は13万5954人で、朝鮮・韓国人に次ぐ多数派を占めている。直近の5年間をみると、毎年2800人~3600人の中国人が新たに帰化している。

■広がる在留の間口

 ドラッグストアで販売員をしている孫紅君(ソン・ホンチュン)さん(41)=仮名=は、語学留学で来日して20年になる。一緒に来日した幼馴染の中国人男性と結婚し、生まれた一人息子は今年高校に上がった。

 孫さんと息子は帰化したが、ご主人は永住者の資格のままだ。帰化すれば、世界のほとんどの国にビザフリーで行けるが、逆に故郷の中国に長期滞在するにはビザが必要になる。つまり、万が一、帰国せざるをえなくなった場合を考え、ご主人は帰化でなく、永住者を選択した。

 むろん、永住者資格の取得や帰化をするにはそれなりの期間が必要だ。一般的に永住者は10年、帰化は5年継続して日本に居住している必要がある。

 犯罪歴はもちろん、交通違反があっただけで取得は難しくなる。きちんと納税しているなど、日本の利益に資することも認められなければならない。

 ただし、手っ取り早く帰化、永住者になる抜け道はある。日本人や永住者と結婚して配偶者の在留資格を取得すれば、要件が緩和される。だが、それも思い通りにいくとは限らない。

 そこで、彼らはとりあえず日本に入国し、あらゆる手段を使い滞在しようとする。法務省関係者が言う。

「日本政府が推進する『留学生30万人計画』も手伝って、日本への入国、在留の間口は目下、広がっています。少子高齢化による生産人口の減少を背景に、20年までに優秀な留学生の獲得と在留を目指すこの計画は、留学生の受け入れ体制の整備や卒業後の就職支援を進めている。就労による来日も、原則大卒という要件が、一部の業種では、専門学校卒の専門士にまで拡大されています」

■上有政策、下有対策

 要するに、一昔前に比べ、日本への入国は容易になったのだ。後は、何らかの事情で在留資格の更新や切り替えが危うくなった時、中国の諺である「上有政策、下有対策(政府の政策を、下々が対策を講じて骨抜きにすること)」を駆使するのだ。

 都内の有名私大に通う王暁波(ワン・シャオポー)さん(27)=仮名=は、大学入学を目的に日本語学校の留学生として来日した。

「国立大学を受験し合格したものの、気が変わり、現在通う私大の再受験を決めた。しかし、私大の受験日は秋で、在留期間はほとんど残っていませんでした。受かった国立大に入って学費を払うのは馬鹿らしい。一旦、帰国するしかありませんでしたが、中国には戻りたくなくて、父に泣きついたんです」(王さん)

 父親は中国の地方政府の役人。王さんは、留学に合わせて買ってもらった都心の戸建てに住んでいた。父親は、息子が日本でそのまま暮らせるように画策を始めた。その戸建てを仲介した不動産会社の社長に相談するよう指示したという。

「不動産会社へ行くと、社長から、うちの社員になって就労資格を取ろうと誘われました。でも、私は働くつもりはないと断ろうとしたら、給料を返してくれればいい、と言うのです」(同)

 不動産会社の社長は、王さんの在留資格を「留学」から「人文知識・国際業務」(当時)に変更させたのだ。毎月、20万円の給料から社会保険や所得税などを控除した金額が銀行口座に振り込まれた。彼は給料日の翌日だけ事務所に行き、現金で20万円を返還した。不動産会社が脱税に問われかねない違法行為だが、彼は希望の私大に合格すると、滞在資格はまた「留学」に戻したという。

(2)へつづく

「特別読物 今や80万人! 爆増する『在留中国人』の裏技――前端紀嬉(ライター)」より

前端紀嬉(まえはた・のりこ)
1965年生まれ。中央大学中退後、映像、音楽制作会社を経てフリーライターに。北京に留学経験があり、中国事情に精通している。