税金310億円で「ひとみ」失敗…虫が良すぎるJAXAの後継機要求

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「失敗したわけではない。勉強したのだと言いたまえ」――かのエジソンは科学者達をこう激励したというが、さすがに今回は勉強代が高すぎである。

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は今月14日、X線天文衛星「ひとみ」の後継機の開発許可を、所管する文科省に要求した。言うまでもなく「ひとみ」は、宇宙観測を目的として今年2月に打ち上げられたものの、姿勢が安定せず空中分解。税金から拠出された310億円が宇宙の塵と消えたのは記憶に新しい。

 科学部記者が解説する。

「JAXAはその後の調査で、空中分解の原因を2つに絞りました。ひとつは、姿勢制御プログラムの設計ミス。そしてもうひとつが打ち上げ後、狂った姿勢を直すために委託業者が行った単純な操作上のミスです」

 技術立国が聞いて呆れるが、JAXAは6月半ば、理事長ら3人の給与一部自主返納などで幕引きを図った。それからたった1カ月での“おねだり”なのだ。しかし、これには予兆があった。

 科学ジャーナリストの話。

「今回の発表の1週間前、JAXAは突如、『ひとみ』が、実は遠い宇宙にあるブラックホール周辺の高温ガスの観測に成功していたと発表しました。これは、『ひとみ』がいかに高性能であったかを証明して、後継機開発への批判を和らげるための下準備なのです」

 加えて、大西卓哉宇宙飛行士の活躍を追い風にしたフシもある。とまれ、目論見は奏功し、馳浩文科相は15日、後継機の開発費を来年度の予算要求に盛り込むと発表したわけだ。

「事故が起きた技術的な原因は分かったにせよ、なぜそのような事が起きたのか、また、今後どう改善し、ミスを犯さないようにするのか、“出資者”である国民に対しての説明はなされていません。もしこれが民間企業だったら、株主損害賠償請求訴訟もの。肝心な部分が曖昧なまま開発しても、同じことを繰り返す可能性は十分にあります」(同)

 税金を無限に吸い込むブラックホールになっていないか、JAXA自身を観測する必要がありそうだ。

週刊新潮 2016年7月28日号掲載

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