「伝説のすた丼屋」社長、上場を公言 年内との予測も

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中高年に完食は厳しい?

 茶碗3杯分の白飯の上には、秘伝のニンニク醤油ダレの絡む大量の豚バラ肉。「伝説のすた丼屋」の看板メニュー“すた丼”は630円の並盛が560グラムで、吉野家など“牛丼御三家”の特盛よりもボリュームがある“メガ盛り”だ。多くの若者から圧倒的な支持を得て店舗は急拡大し、上場計画が浮上しているという。

「伝説のすた丼屋」の運営会社はアントワークス。社長は、自ら“伝説”と名乗って恥じない“元不良少年”の早川秀人氏(51)だ。経済誌の外食担当記者によれば、

「もともと“すた丼”は、東京・国立市内にあった創業1971年の“サッポロラーメン”店主の橋本省三さんが生みの親。早川さんは“すた丼ファン”で、橋本さんをオヤジと呼んで慕っていたアルバイトの1人でした」

 早川氏は夕刊紙のインタビューで、“父親は公安関係の警察官でしたが、バイクを盗んだりして8回補導され、高校を中退した”と、かつての“やんちゃ時代”を告白している。

早川秀人氏(アントワークスHPより)

「橋本さんが亡くなり、早川さんが2006年に社長に就任しました。それまで『伝説のすた丼屋』は国立市など多摩地区を中心に10店舗ほどでしたが、早川さんは全国に出店攻勢を開始したのです。今では、東は宮城県から西は熊本県に進出し、米国にも2店舗を構えている。わずか10年間で75店舗の一大チェーンを築き上げたことは、“外食産業の風雲児”と言っていいでしょう」(同)

 外食産業の市場規模は約24兆円。牛丼だけでも“御三家”がしのぎを削る“戦国時代”であることはご存じの通りだ。

■課題は自己資本比率

 さて、元不良少年がアルバイトから社長に上り詰める成功譚。外食産業にはありふれた話だが、早川氏も「ワタミ」の渡邉美樹元会長のように自らの“伝説”を引き合いに出して、社員やアルバイトに過酷な労働を強いていないのか。

「他の外食産業の会社に比べて、悪評は聞こえてきません」

 こう語るのは、外食産業に詳しいアナリストだ。

「アントワークスの強みは社員の平均年収の高さです。上場している外食産業社員の平均年収は約480万円ですが、アントワークスは非上場にもかかわらず同水準の約470万円。業界平均が400万円以下という点を考えれば、“社員に優しい企業”といえるのではないでしょうか」

 アントワークスは19年までに店舗数180、年商86億円の目標達成を掲げている。

「過去5年間の決算を見ると、11年7月決算の売り上げは32億7400万円で、昨年7月決算は45億6600万円。5年連続で前年の売り上げを上回っているものの、最終利益が安定していません。昨年までの過去3年間は黒字を維持しているが、12年7月期は出店費用などが嵩み約1億1700万円の赤字を計上しています」(同)

 早川社長は来年までに株式を公開すると公言しているが、兜町には“年内上場”との観測も流れている。

「店舗拡大には資金が必要だが、銀行からの借り入れにも限界があるので株式上場が一番手っ取り早い。資本金4500万円のアントワークスの自己資本比率は、3・6%と極めて低く信用力が十分とは言えません。飲食業界で1部上場企業の自己資本比率は平均34・7%。早急に第三者割当増資を行って業界平均まで引き上げれば、信用力も向上して上場を果たせるはずです」(先の記者)

 早川社長は、上場を果たして新たな“伝説”を築くことができるか。

週刊新潮 2016年7月21日参院選増大号掲載

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