大手銀行が続々移転で、シティが廃墟になる? 英国EU離脱20の疑問(16)

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やり手の金融機関はシティから一斉に逃げ出すか?

 ロンドンのテムズ川沿いに広がる金融街「シティ」は、わずか2・9平方キロの広さに、30万人以上が働いている。イングランド銀行やロンドン証券取引所、ロイズ保険組合など世界の一流金融機関が集まり、昼夜を分かたず巨大マネーが飛び交う場所だ。ところが、イギリスの「EU離脱」はこの街を廃墟にしてしまうかも知れない。事実、大手金融機関が続々と移転の準備を始めている。

 国民投票の結果が明らかになったその日、英BBC放送は、大手投資銀行のモルガン・スタンレーが投資銀行部門の従業員2000人をアイルランドのダブリンか、ドイツのフランクフルトに異動させる準備をしていると報じた。

 それだけではない。同日には大手銀行のJPモルガン・チェースが英国で働いている1万6000人のうち、4000人を英国外に出す見通しを、そしてHSBCホールディングスがユーロの取引部門1000人をパリに異動させることを検討していると報じられたのだ。

「サッチャー首相時代に徹底した規制緩和で世界中のマネーを集めたシティですが、EU離脱で一番のネックになるのが“パスポート制度”が使えなくなることです。これは、EU内のどこか1カ国で免許を取得すれば、別のEU加盟国でも自由に支店を開くことが出来るというもの。シティがEUから切り離されると、パスポート制度のメリットが無くなってしまうのです」(メガバンク関係者)

「EU残留派」が最も恐れていたことが現実になるのだろうか。

「特集 ヘイトと衆愚が理性にまさった? 地球的大混乱で誰が笑うか? まさかの英国『EU離脱』20の疑問」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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