早速「出ていけ」の落書きが なぜ移民は憎まれる? 英国EU離脱20の疑問(8)

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イギリスの移民はそんなに憎まれるほど狼藉を働いたのか?

 国民投票直後、ロンドン市内ではさっそく「移民は出ていけ!」なる落書きが見つかっている。

 言うまでもなく、EU離脱の最大の原因とされたのは、イギリス国民による「移民」への拒否反応だ。

 共同体として生きた43年の歴史を捨てての決断は、憎しみの大きさを物語る。

「EU圏内からイギリスへ入った移民の多くは、ポーランドなどの東欧系です」

 と語るのは、さるイギリス在住ライターである。

「しかし、彼らが狂暴で犯罪を多発させているかと言えば、そんなことはない。建設現場の作業員など、所謂『3K』の職場でマジメに働くのが大半です。問題はあまりにも急速に移民が拡大したことです。保守層を中心に国のありようが変わることへの感情的な反発が生まれ、加えてブルーカラーの職が奪われたことが怒りを招いたのでしょう」

 あるシンクタンクの試算によると、総人口6500万人のイギリスでは今後、年間40万人近くの移民が増えていく。うち半分がEU圏内からのそれだという。

「英語は、ドイツ語やフランス語より覚えやすい。また、イギリスは給与も高く、移民であっても医療費はタダ。2004年のEU東欧圏拡大以来、そんな厚遇に惹かれてここに移民が大量に集まっているワケです」(同)

 そのため、今やロンドンでも英国籍の白人の割合は5割を切った。今後は、それが地方へと押し寄せていくはずだったというのだ。

 日本でも移民の是非を巡る議論が持ち上がっているけれど、安易な受け入れが許されないことを改めて実感する、今回の結末である。

「特集 ヘイトと衆愚が理性にまさった? 地球的大混乱で誰が笑うか? まさかの英国『EU離脱』20の疑問」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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