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沖縄の平均所得は203万円 最貧困県を維持し続ける“ある法則”の存在

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新潮45 2017年5月号 
2017/4/18発売

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沖縄社会全体を貫いている“ある法則”とは

 内閣府が行った調査によれば、沖縄県の県民一人当たりの所得水準は「203万5000円」。これは47都道府県中の最低額で、トップである東京都の「442万3000円」と比べると、2倍以上の開きがある。

 さらに、沖縄の「でき婚」率や若年出産率、シングルマザー世帯の出現率も高く、構造的に「貧困世帯」を生み出しやすい社会になっている。政府が2016年度の予算案に「沖縄子供の貧困緊急対策事業」10億円を計上し、現在、沖縄本島の各市町村が生活困窮世帯の子らに対応する事業を計画中だが、その背景にはこうした事情があるわけだ。

 なぜ沖縄県の所得は低いのか――。沖縄大学准教授で、現地にて企業再生事業も手がける樋口耕太郎氏が「新潮45」5月号に寄せた『最貧困県はいかに「維持」されているか』の中で、沖縄社会全体を貫いている“ある法則”について解説している。

■クラクションを鳴らさない

 樋口氏が沖縄でホテル経営を始めた時のことである。数多くいた非正規雇用者の中から、有能な十数名を選び、正規雇用への切り替えを提案したことがあった。しかし、予想に反し、その多くは辞退を申し出た。

〈このような現象を見て、本土経営者たちは、「ウチナーンチュ(沖縄の人)は向上心がない」と結論づけるのだが、ウチナーンチュの立場で、ある意味「そうならざるを得ない」事情にまではほとんど理解が及ばない。私も、はじめはその理由がまったく理解できなかった〉(記事本文より引用、以下同様)

 10年以上の時間をかけて樋口氏が理解した“事情”、それは現状維持が鉄則で、出る杭の存在を許さない、「変わらない沖縄」の法則だった。このケースでいえば、他人を差し置いて昇給・昇格することがはばかられた、ということになる。こうした環境を、樋口氏は以下のように分析している。

〈(沖縄社会は)コンビニで待たされても誰も怒らないし、レストランでぞんざいな仕打ちを受けてもクレームする顧客は少数だ。不注意運転にクラクションを鳴らすこともないし、待ち合わせをすっぽかされても嫌みのひとつも言わない(略)人が穏やかだから「クラクションを鳴らさない」、という面ももちろんあるが、それ以上に、「クラクションを鳴らせない」のだ。事情がどうであれ、声をあげる人物に社会的な圧力がかかるからだ。このことを理解せずに、沖縄の経済と貧困の本質を捉えることはできない〉

 つまり、人間関係に波風を立てないことが最優先される沖縄社会では、人より抜きんでた活躍や成功は煙たがられる。結果、収入改善の機会も失われることになり、ここに沖縄が「最貧困県」となっている理由があると、樋口氏は見るのだ。

■地元に対する「裏切り」

 人間関係の見えない圧力は、消費行動にも影響を与えている。その象徴的な商品が、いまだ沖縄でのみ販売されている「女優の松山容子がパッケージの初代ボンカレー」だ。消費者がモノを買う時に注目するのは品質や価格ではなく、“はじめに利用したから”“他人が買っているから”という点。結果、同じ商品を無批判に買い続け、またメーカー側もそうした事情を理解し、“本土向け”商品のようなリニューアルを極力避けるのだろう。

 こうした保守的な消費性向について、

〈沖縄では人間関係が「承認」した商品やサービスであることが極めて重要なのだ〉

 と樋口氏は説く。

〈友人たちがオリオンビールを飲んでいる席で、エビスビールを注文するのは相当な勇気が必要だし、行きつけのスナックで久米島出身者が「久米島の久米仙」以外のボトルをキープすることは、地元に対する「裏切り」のニュアンスがある〉

 さらに本土に比べ、ブランド品を持ち歩く女性を見ないのも、人より突出してオシャレに見られることを嫌ってのことなのかもしれない、と樋口氏は読む。

 記事では、11年連続で出荷量減少を続ける「泡盛」の蔵元や、基地反対運動までにも「変わらない沖縄」の法則が貫かれていると指摘。そして、そんな変わらない沖縄が“変わるべき”時期に来ていることについても言及する。実際に沖縄社会に身を置く筆者だからこその視点で書かれた、沖縄論である。

  • 新潮45
  • 2016年5月号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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