NHKドキュメント72時間で紹介 「人生」と似ている!?「酷道」の魅力

社会2016年6月3日掲載

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「酷道」とは、読んで字の通り、お国がつくる道路であるにもかかわらず、なんらかの理由で車両による通行さえも困難である「酷(ひど)い状態の国道」のことである。

 当然、造語であり広辞林にも載っていない。しかし、いつのまにか天下のNHKが説明もなく番組タイトルに使うほど、「酷道」はメジャーになっていた!

 6月3日NHK総合テレビにて22時50分放送予定の「ドキュメント72時間」のタイトルは「ゆきゆきて 酷道439」。

 番組ホームページにも「酷道」について説明があるわけではなく、さらりと「全国から酷道ファンも訪れる」と書いてある。酷道ファン? そんな人いるの?と驚くなかれ。喜怒哀楽の全てがつまった酷道は、日々熱烈なファンによって広められ、支えられ、崇められ、ますます酷道としての輝きを増しているのである。

「酷道」ファンでもある佐藤健太郎氏は、自著『国道者』で酷道の魅力と酷道ファンの心理をこう語る。

「道路界のエリートといえば国道である。何しろ日本国が特に指定した道だ。多くは整備も行き届いており、交通量も多い。特に地方においては、その存在感と安心感は格別なものがある。ところがそのエリートたる国道に、ごくたまに酷い道路が混じっているのだ」

「何が楽しくて、彼らはわざわざそんな道を走りに行くのか。ひとつには、『エリートの裏の顔』に対する興味だろう。国家が指定した道といういかめしい肩書きと、ぼろぼろで狭苦しい路面のギャップは、妙に人を惹きつけるのだ」(『国道者』より)

阿久根港岸壁で道路が寸断し海に入る「国道」。海上約70キロ先の長崎半島野母崎に「上陸」して長崎市中心部に続いている。

 その番号をもじって「与作」とも呼ばれている439号線に関しては、

「徳島市から四万十市へ向かう四三九号は、総延長三五〇キロ近い長大国道ながらほとんどが片側一車線で、すれ違いすら難しい場所が少なくない」

 とその酷道ぶりを紹介している。

 そもそも四国には酷道が目白押しだそうである。193号、438号、440号、441号、494号が439号の酷道仲間。

 人に歴史ありというが、全国を見渡してみると道路にも悲喜こもごもの歴史があるのだ。

・建設が始まったものの、崩落が激しく工事が中断したまま放置された国道152号の青崩峠(静岡県・長野県)

・地元豪腕政治家によって、6車線を予定していた東名高速道路から2車線削り取って(!)建設された小田原厚木道路(神奈川県)

・鹿児島県阿久根市の阿久根港岸壁で道路が寸断されているのに、海上約70キロ先の長崎半島野母崎に「上陸」して長崎市中心部に続いている国道499号

 などなど道路事情は様々。国道要件を満たす理由はあとからついてくる。「拡大解釈」「弾力的運用」はわが国のお家芸・伝統芸能ではあるが、こと国道に関する限り、あらゆる叡智が結集している。

 佐藤健太郎氏によれば、真の道路好きは、酷道だけでは飽き足らず、見ただけではわからない奇妙な道を「発掘」しては、喜び情報を共有するのだという。酷道以外にも奇妙な国道が全国にはたくさんあるのだという。

 天下のNHKでさえ認める「酷道」の魅力、それは計画とは常に予定通りにいくものではないという諦めと、予定通りに行かないからこその面白さが「人生」と似ているからなのかも知れない。

デイリー新潮編集部