杭打ちデータ改ざん「旭化成」がなぜ最高益?

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「現場」に足を運び、自分の目で「現物」を確かめ、「現実」を知ることが重要。旭化成の小堀秀毅社長(61)は、4月1日の入社式で新入社員にこう訓示した。杭打ちデータ改竄で揺れる旭化成建材のみならず、グループの社員は小堀社長の言葉を何と聞いたか。

 旭化成の2016年3月期決算は、売上高は約1兆9500億円。連結営業利益は約1650億円で、3期連続の過去最高益となる見通しだ。全国紙の経済部記者によれば、

「物件の引き渡しが順調で、リフォーム関連の需要も多く、住宅事業が収益を下支えしています」

 だが、建設担当のアナリストはこう分析する。

「引き渡しが順調なのは、杭打ちデータの改竄発覚以前に受注した物件で、昨秋から受注は減少している。過去10年間の杭打ちは3052件。その調査費用約20億円は特別損失で計上しましたが、“傾斜マンション”の補償費用は他社との調整が難航していて未計上なのです」

 補償総額は100億円以上とも言われる。しかし、連結営業利益の額を考えれば、旭化成が全額負担しても屋台骨を揺るがすことにはならないはずだ。

「旭化成は、4月からスタートした3カ年の新中期経営計画で“シニア”と“在宅医療”をキーワードにした住宅新事業を開始しています。杭打ちデータ改竄で、旭化成の“ヘーベル”ブランドは地に落ちて顧客離れも進んでいる。“傾斜マンション”の補償費用は次の決算に盛り込まれるので、過去最高益の記録更新は難しいでしょう」(先のアナリスト)

 旭化成グループの社員は、社長の訓示を肝に銘じて“現場”へ足を運ばないと、同じ轍を踏みかねないのだ。

週刊新潮 2016年4月21日号掲載

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