売却した“自宅”に住み続ける「リースバック」とは

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 預貯金、株式、投資信託……資産はいろいろあれど、つい見落としがちになるのが“自宅”という資産だ。売れば売却益は入るが、別に住居を探さねばならない。売却益でローンの残債を払いきれなかったら、自宅を失った上に借金も残る。

 衣食住の“住”を確保しつつ、資産として活用できないものか――そのひとつの方法が“リバースモーゲージ”である。

「これは金融機関が行っている、おもに高齢者向けの不動産担保ローンです。自宅は所有しているが金融資産が少なく、老後の生活費に不安のある人向け、と言っていい」(不動産業者)

 居住中の自宅を担保に、金融機関がお金を貸し付ける。借りた側は金利分のみを払い続ければいい。そして所有者が亡くなったら、自宅を売却して現金で一括返済する、という方式だ。

「リバースモーゲージの場合、貸し付け金利は2〜4%のところが多い。例えば貸し付け金額が2000万円で金利が3%なら、年間の支払額は60万円。月々5万円支払うだけで自宅に住み続けることができ、しかも2000万円というまとまったお金を手にすることができるのです」(同)

 貸し付け金で住宅ローンの一括返済が可能な場合もあり、金融機関の中には、貸し付け金から残債返済額を差し引いた額にしか金利を適用しないところもある。

「ただ、貸し付けの査定が非常に厳しい。一般的に、実際の貸し付け金額は、市場価格の4割程度。しかも土地のみが評価の対象で、建物は考慮しない。貸し付け金額は思った以上に低くなってしまうのです」(同)

 先の例だと、2000万円の貸し付けを得るためには、市場価格が5000万円と査定されることが必要になってしまうのだ。

■引っ越さずに自宅を売る

 そこで最近、注目を集めるのが“リースバック”。こちらは“売却した自宅に賃借人として住み続ける”というものだ。3年前からリースバックを手掛けるハウスドゥの安藤正弘社長は、仕組みをこう説明する。

「お客様が所有する不動産を、私どもの会社が直接買い付けし、その代金を一括でお支払いします。この不動産について、別途お客様とリース契約するので、売却後もそのまま住み続けることができます。また、将来的に再度購入することも可能なのです」

 まず、該当する物件の市場価格を査定する。

「ほとんどの場合、市場価格の70%が、当社の買い取り価格になります」(同)

 市場価格が3000万円の場合、売却価格は2100万円になり、代金がすぐに支払われる。名義が変わるので、固定資産税を払う必要はない。ローンが残っていても、売却益で一括返済が可能ならば問題はない。

「リース契約は3年で、更新は可能ですし、更新料もかかりません。家賃は2000万円ほどの物件だと、売却価格の8%です」(同)

 2100万円の8%は、年間168万円。家賃は月14万円。ただし、家賃がそれまでのローン支払額を上回るケースには要注意。

「すでに契約されているお客様の7割が、将来の買い戻しを希望されます」(同)

 買い戻しの金額も事前に設定される。

「当初の代金に、15%を加えたものになります」(同)

 2100万円なら、買い戻し額は2415万円。低金利の住宅ローンを組み直しての買い戻しも可能だ。買い戻しが履行できないと、

「当社が市場で売却しますが、もともとお客様にお支払いいただく金額以上で売れた場合は、経費を差し引いた額をお客様に還元しています」(同)

 生活資金、ローン返済資金、事業や投資の資金を、こうして調達する方法もあるのだ。

 さて当欄終了にあたり、老子の金言“足ることを知る者は富めり”を。多謝。

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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