「菅」官房長官の人事横槍が恐ろしい「田中一穂」財務省事務次官

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 中央官庁のトップ人事は「10年先まで決まっている」と言われる。政権の介入を避けるため、将来の次官候補を早めに決めておく官僚社会の知恵だが、菅義偉官房長官を怒らせてはこの不文律も風前の灯。時の権力者の逆鱗に触れた財務省の田中一穂事務次官は戦々恐々だという。

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菅義偉官房長官

 順当にゆけば、霞が関では6月にも新しい財務省事務次官が誕生する。田中一穂氏が退任し、かねてから有力候補と言われてきた佐藤慎一主税局長が昇格するという人事だ。

 財務省担当の記者が言う。

「財務省では木下康司、香川俊介、そして田中氏と昭和54年入省の同期が3代続けて次官になるという異例の人事が行われてきました。佐藤局長は、その田中次官が引っ張り上げてきた人物。主計局長から事務次官というコースが財務省の主流ですが、35年ぶりに主税局長出身の次官が生まれることになります」

 実際のところ、今の財務省の局長クラスには佐藤氏以外にめぼしい人材がいないと言われており、早くから“3人の次は佐藤”と目されていた。

「ところが、ここに来て菅官房長官と田中次官の関係がしっくりいっていないという話が流れている。田中次官が推す佐藤局長の昇任も、すんなりいくかどうか不安視されているのです」(同)

 省庁のトップ人事は内閣官房長官と副長官で構成される「閣議人事検討会議」が審議したうえで閣議で了承される。つまり、菅氏が「NO」と言えば、次官人事はひっくり返ってしまう。原因は消費税の軽減税率議論にあった。

■出入り禁止

 官邸キャップが言う。

「昨年9月に財務省の “還付制度案”が報じられましたが、これは、野田毅・党税調会長と佐藤局長が中心になって作ったもの。ところが創価学会側が強烈な拒否反応を示して、流れてしまう。税調の先走りに怒った菅氏は野田氏を更迭してしまうのです」

 焦った財務省サイドは次に生鮮食品を対象にして4000億円の捻出財源にするという案を持ち出し、11月24日に宮沢洋一税調会長、谷垣禎一幹事長、安倍総理の3者会談に持ち込む。

「ところが、これを知らされていなかった菅氏が激怒。11月29日に議員会館に田中次官と佐藤局長を呼びつけて、“4000億円程度では痛税感は緩和されない”と白紙撤回を要求するのです。しかし、この場で田中次官が抵抗したため菅さんは2人を出入り禁止にしてしまうのです」(同)

 結局、生鮮食品に加工食品(酒類・外食を除く)を加えて1兆円の軽減税率に落ち着くのだが、菅氏は「佐藤君は次官になれない」とまで周囲に漏らしていたという。もっとも、これは菅氏一流の“ブラフ”と言われており、佐藤氏が有力次官候補であることは変わらない。むしろ懸念は、ここに来て急浮上している消費税増税の先送り案だ。

「そもそも財務省が消費税増税の案を進めていた時、田中氏が理財局長で佐藤氏は日銀担当審議官。後輩たちからは“汗をかかなかったツートップは何やっているんだ”と思われているのです」(先の財務省担当記者)

 菅氏の横槍も怖いが、怒りが解けても待っているのは“針のむしろ”である。

「ワイド特集 春色の時限爆弾」より

週刊新潮 2016年3月24日号掲載

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