炎上したくないなら「夜中の手紙」は出すな エコノミストが語る実践的情報処理術

IT・科学2016年3月17日掲載

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 テレビやラジオのコメンテイターとしても知られるエコノミストの伊藤洋一氏は、1996年以来、毎日ブログを更新している。アウトプットすることで、より自身の考えをまとめ、発信する力が強化される、と考えているからだという。

 もちろん、発信量が多くなれば、炎上の発火率も高くなるはずだ。

 伊藤氏は発信に際しては、いつも母親から言われていた教えを肝に銘じているのだ、という。その教えも含め、伊藤氏なりの「炎上防止の心得」を、自身の情報処理術をまとめた新著『情報の強者』から引用してみよう。

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エコノミストの伊藤洋一氏

(1)「夜中の手紙」を出さない

 子供の頃よく母親に、「夜中に書いた手紙はそのまま出すな」と言われたものである。その時には半ば聞き流していたが、大人になってからその意味がよく分かった。夜は自分の部屋に入るから、多くの場合は一人である。

 夜には普通の人でも“想像”、場合によっては“妄想”もしくは“思い込み”が広がる。母が言っていたのは、「そんな精神状態で書いた手紙は、どこかおかしいから気をつけて翌朝お日様の下で読み直して出しなさい」ということである。その言葉はずっと頭に残っている。

 多くの人にとって、発信の余裕があるのは夜だろう。LINEであれ、ツイッターであれ、ブログであれ、フェイスブックであれ、授業中や勤務中ではなく、すべてが終わった夜に書くことが多い。

 それは仕方がないにしても、「夜は妄想が広がりやすい」ということについて常に自覚的であったほうがいいように思う。

 SNSでは読み直すどころか、書き込んですぐに「送信」をしてしまうことも珍しくない。

 母が見たら気絶しそうなことを私も含めた、多くの現代人がやり続けている。酔った勢いの過ちが「永久不滅」になることだってある。実に実に恐ろしい世界なのだ。

 だからこそ「夜の発信」は、「危険がいっぱい」であることを認識して、文章を読み直すなど慎重を期すべきだと思う。最近は役所の地位のある人が不用意な発言をして地位を追われることもあった。これも「夜の不用意な書き込み」が原因になっている場合が多いのではないか、と思う。酔ってやるのはもっと危険だ。

 車を運転するにあたっては運転免許証取得が義務づけられているのと同じように、本来は、ネットに関しても一定の教育を受けることを必須としたほうがいいのではないか、と思うこともある。

(2)「論理よりも言葉」に気をつける

 また、「論理よりも言葉に気をつける」ということも肝に銘じている。

 文章を長く書いてきて得た経験則は、「読み手は論理にはあまり反応しないが、“言葉”には非常に強く反応する」ということである。

 我々の日常会話でもそうだ。許せない言葉というのは思い当たるのだが、許せない論理というのはあまりない。人間の感情は明らかに“言葉”に対して強く反応する。

「言いたいことはわかるけど、あんな物言いはないじゃないか」

 こんなふうに感じたことがない人はいないだろう。

 特にネットでの言論においては、ちょっとした物言い、言葉が「発火点」となって炎上することが多い。炎上を起こして注目を集めたいのならば話は別だが、基本的にそういう事態は避けたほうがいいのは言うまでもない。

 また、文章や発言は、引用者によって恣意的に編集される、ということも常に意識する必要がある。もともとメディアは、見出しにして「おいしい」と思うフレーズや単語をピックアップして大げさに伝える癖があるものだが、ネット時代にはその伝達のスピードや拡散の規模が以前とは比べ物にならなくなっている。さらにかつては有名人でなければ、発言が広められることもなかったのに、今では“匿名”の発言者であっても、問題発言がもとで炎上することがある。

(3)「流す勇気」を持つ

 もう一つ、重要なのは、「流す勇気」だろう。

 SNSも各メディアによって特性があるとはいえ、フェイスブックも基本的には「つぶやき」の延長線上だと思っている。そこからコミュニケーションがスタートするケースもあるが、勝手に「書きたいから書いている」という感覚だ。そして他の人も恐らくそうだろう、と思うようにしている。

 だからたくさんレスポンスをいただいたとしても、基本的に一つ一つに丁寧に返答するようなことはしていない。多くの場合、いろいろな書き込みに対して、基本的には流させてもらうようにしている。

「炎上」にはいろいろなタイプがあると聞いているが、やり取りの中で相互に感情が高まってしまうケースも多い。なまじ反応をするから、相手がよりエスカレートしてしまい、さらにこちらもまたそれに引きずられてしまう。

 ネットで書くことは、基本的には「個人のつぶやき」であるという認識は常に頭の片隅に置いておきたい。反応が多くても、「いいね!」をたくさんもらえても、実生活には影響はない。

 いくらオバマ大統領がツイッター好きだといっても、私のレスに返事はくれないだろうし、私もそんなことは期待しない。もっと身近な人が相手でも同様である。そのくらいの心構えでいないとストレスが増えるだけである。

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 この三つの心得のおかげか、伊藤氏のブログは20年間、「大火事」を起こしたことはないという。