イラン総選挙“改革派伸長”でも「ロウハニ」の綱渡り

国際週刊新潮 2016年3月10日号掲載

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 歴史的な核合意が行われ、経済制裁解除とみるや各国代表のイラン詣でが喧しい。

「昨年夏以降、日本はもちろん、英仏独伊露中韓……と引きも切りません。石油埋蔵量は世界4位、天然ガスは世界1位、設備は老朽化、購買力もある8000万人級の市場がオープンとなれば、“ラスト・フロンティア”です」(経済部記者)

〈悪の枢軸〉と名指しされた過去に逆戻りせぬか、2月26日に行われた総選挙が注目された所以(ゆえん)だ。

イランの最高指導者ハメネイ師

「首都テヘランの30議席はロウハニ大統領支持の“改革・穏健派”が独占する勢いで、対外融和路線を進める現政権が支持されたと見てよいのでは。インフレ率が13%、若者の失業率が25%にも達していたため、新興富裕層を中心に新たなビジネスチャンスを求める人々が多かったのでしょう」

 とは、現代イスラム研究センターの宮田律所長。

「ただし、いかに大統領が支持されようと、最終的に最高指導者が決定権を持つのが宗教国家イランです」

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「2009年の民主化運動“グリーン革命”は、最高指導者ハメネイ師麾下の革命防衛隊や宗教警察により徹底的に鎮圧されました」

 そのイスラム原理主義に基づく思想統制は、今も力を失ってはいないという。

 東京外国語大学教授の飯塚正人氏も言葉を継ぐ。

「権力が二重構造にあるイランで、ハメネイ師を担いでいるのはあくまで保守強硬派。“改革”が進むようなら黙っていないでしょうし、最大の不安材料はアメリカ大統領選です。もしアメリカがイランに対して強硬に出るような大統領を選べば、とたんに反米のこの層が硬化するでしょう」

 核合意の卓袱台返しでも起きようものなら、〈悪の枢軸〉の過去に逆戻りだ。