兵士の給料は半減「イスラム国」を襲う物価高

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 英語ではWell fed, well bred.と言い習わし、『管子』の一節は「衣食足りて礼節を知る」と教えるが、たっぷり金がありながら、人質虐殺など無道を働いたのが過激派組織「イスラム国」だ。彼らが今、急激なインフレに頭を抱えているという。

「シリアの反体制グループによれば、現金不足が深刻だそうです。有志連合やロシアによる相次ぐ空爆と、イラク軍等による陸上部隊の侵攻で流通が遮断。また、世界的な原油価格の下落で、大きな資金源だった石油密売がダメージを蒙っているのです」(国際部記者)

待遇改善要求でもするか(写真:ゼータイメージ)

 一時期は豊富な資金力を誇ったイスラム国だが、兵士たちの給料は昨年12月から半減、電気も配給制となり、無料だった栄養ドリンクやチョコレートバーの支給も廃止。兵士に新婚旅行をプレゼントしたり、住民に児童手当を支給したりなどといったこともできなくなった。

「彼らが“首都”とするシリアのラッカでは、ガス代が25%アップ、肉は70%アップ、砂糖も2倍の値段に跳ね上がりました」(同)

 現代イスラム研究センターの宮田律氏も言う。

「昨年秋には独自通貨を発行したと発表しましたが、結局は記念硬貨的なものを作ったに過ぎず、インフレが進行した現在、流通はドルを中心に行われています。ただ、そのドルも不足しているようです」

 有志連合の空爆で大量の現金が保管されたイスラム国の金融拠点が破壊されたとも伝わり、また、国際金融機関の厳しい監視のため支配地域への電信振込も事実上不可能な状態。

「支配地域の住民たちが大量に逃亡していることも大きいでしょう」(同)

 彼らから徴収する“税金”もまた、大きな現金収入だったのだ。

「ただ、心配なのはテロです。彼らは追い詰められるほど、テロで対抗しようとする危険性がある」(同)

 その言葉を裏付けるように2月21日、シリアでイスラム国による連続爆弾テロが発生、190名以上の死者を出した。「貧すれば鈍す」が「窮すれば通ず」に転ずると厄介極まりない。

週刊新潮 2016年3月3日号掲載

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