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「糖質制限ダイエット」第一人者の死、20年前にも似たケースがあった! 医師の見解ははっきりと「悪」

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週刊新潮 2017年5月4・11ゴールデンウィーク特大号 
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肉や揚げ物などを大量に食べる食生活を送ることになる可能性が

 2月6日に心不全でこの世を去った、作家の桐山秀樹さん(享年62)。米やパン、蕎麦やうどんなどの糖質の量を減らす「糖質制限ダイエット」について20冊以上の本を著し、自身もその実践者として知られた存在である。が、“糖質以外ならいくらでも摂取して良し”というのが売りのこのダイエット法には、不足したカロリーを補うべく、肉や揚げ物などを大量に食べる食生活を送ることになる可能性が。結果、悪玉コレステロールの増加や劣化した油が血管にたまることで、心不全や心筋梗塞、脳梗塞を招く恐れがあるという。

 歴史は繰り返すとはよく言ったもので、実は20年前にも、今回と似たような議論を巻き起こす出来事が起こっていた。

 1996年、作家の宮本美智子さんが脳出血で倒れ、1年1カ月後の翌年6月、多臓器不全で亡くなった。享年51。彼女は『世にも美しいダイエット』というベストセラー本の著者として知られていた。

 彼女の説くダイエットルールによれば、糖分を徹底して摂らないことが重要だという。従って、砂糖、蜂蜜などはもちろん、体内で糖分に変わるものもダメ。米や蕎麦、玄米、イモ類も一切禁止である。野菜を主食とし、エネルギーは油脂類をたっぷり摂る。塩分も大量に摂取する──という食生活。その提唱者が脳出血が元で死亡したものだから、物議を醸したのは当然。

 むろん、糖質制限ダイエットとは異なる部分もあるが、炭水化物の排除、そして意識的であれ、無意識であれ、油脂分の大量摂取の可能性という共通項もあるだけに、やはり気にかかる過去である。

■腎機能の低下

 愛知みずほ大学の佐藤祐造副学長(内科・糖尿病学)は言う。

「ご指摘の心筋梗塞や脳梗塞の恐れに加えて、過度な糖質制限には、他にも生命に危険を及ぼす可能性が考えられます。例えば、私が病院で診た45~46歳の男性は、糖質制限に興味を持ち、本を2冊買って勉強し、実践しているとのことでした。しかし、診察すると、腎機能が相当悪くなっていたのです。タンパク質の摂取が過剰になって障害を与えたか、あるいは、糖が足りず、タンパク質から糖質を作るために、アミノ酸を分解する過程で腎臓に負担がかかったせいか。いずれにせよ、このままだと人工透析を受けることになりますよ、と伝えました」

 糖尿病に苦しむ患者、あるいは、痩せたい人が1~2カ月、炭水化物を減らすのなら問題はないのだが、やはり極端な制限を長期間に亘って行うことは、身体にとって「悪」とはっきり述べるのである。

「さらには、糖質の代わりに脂質が燃焼されていく過程で、ケトン体という物質が出来ます。これは酸性物質ですから、これが増え続けると、体内も酸性状態になり、感染症にかかりやすくなったり、場合によっては昏睡状態に陥ったりすることもあるのです」(同)

 このため、日本糖尿病学会では2013年、

〈炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、薦められない〉

 との提言を出している。

■死亡率が上昇

 また、同じ13年には、より衝撃的なデータも発表された。

 国立国際医療研究センター病院の能登洋医長(当時)らが米科学誌に出した論文によれば、糖質の摂取量によって健康な男女を10のグループに分け、5~26年間の追跡調査をまとめたところ、摂取量の最も少ないグループの死亡率は、多いグループに比べて1・31倍に上ったというのだ。

「これは世界の492の論文を検証し、27万人を対象にした解析です。異論も出されていますが、一つの結果としては、真摯に受け止める必要がある。すなわち、過度な糖質制限には、健康を害する可能性が十分にあると思います」(医師でジャーナリストの森田豊氏)

「特集 糖質制限ダイエットに成功して急逝した『桐山秀樹さん』の教訓」より

  • 週刊新潮
  • 2016年2月25日号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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