預金金利アップの“逆張り”に出た「信金」の目算

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 メガバンクが定期預金金利を引き下げ、生命保険会社が貯蓄性の高い商品の販売を中止し、さらに証券会社が短期投信の取り扱い停止に追い込まれた。金融業界が渾沌(カオス)と化したのは、日銀の黒田東彦総裁(71)が導入した“マイナス金利政策”の影響に他ならない。そんな“逆風”の真っ只中、預金金利を引き上げる金融機関が現れたのだ。

 預金金利アップを公にしたのは東京都の西武信用金庫、福岡県の遠賀(おんが)信用金庫、熊本県の熊本第一信用金庫。いずれも、店頭表示金利に0・01〜0・125%を上乗せするという。

「日銀の当座預金に限って言えば、信金の多くはマイナス金利政策の“悪影響”を受けないのです」

 こう解説するのは、全国紙の日銀担当記者だ。

「マイナス金利政策は、三段階に分けられます。まず、昨年の平均残高にはこれまで通り年利0・1%が付く。また、新たに積む法定準備金は0%で、それを超えた分にマイナス0・1%が適用される。目下、日銀の当座預金残高は約260兆円で、マイナス金利が適用されるのは約10兆円。その大部分がメガバンクや信託銀行、ゆうちょ銀行で、該当する信金はほとんどありません」

 だが、この状況下では英断といえるのではないか。遠賀信金業務推進部に心意気を聞くと、

「日銀のマイナス金利政策発表以降、お客様から“我々の預金も金利がマイナスになるのか”などと問い合わせが相次ぎ、安心していただくため、逆に金利引き上げに踏み切りました。経営内容が健全なので、お客様への“利益還元”のようなものでしょう」

 また、信金には独自の運用先があるという。

「信金の上部組織である信金中央金庫は、年利0・1〜0・125%で資金を預かっている。つまり、信金は安全な資金の運用先を確保しているわけです。今後、他の信金も3信金に追随する可能性が高い」(先の記者)

 信金の店舗数は、全国で約7390。一寸の虫にも五分の魂か。

週刊新潮 2016年3月3日号掲載

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