暴れ馬と柵外に吹っ飛んだホープ「浜中俊騎手」の九死に一生

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 1月24日の中京競馬場(愛知県豊明市)第1レースは、3歳牝馬未勝利戦(ダート・1800メートル)だった。出走馬は16頭。

 揃ったスタートから、左回りのコースを馬は走る。向正面の直線で先頭に立った、単勝1番人気のマーキークラブが4コーナーの出口にさしかかったところで、“事故”は起きた。マーキークラブが突然、外側に大きく斜行し暴走したのだ。そのまま外ラチ(柵)を飛び越えようとして激突し、背面跳びのように転倒。騎手も振り落した。

 この“暴走”に巻き込まれた2番人気のアルセナーレも大きく後れをとって最下位入線。レースは馬連10万3000円、3連単は193万6090円と、大波乱の結果になったのだった。

「“10年に1度あるかないかの事故”と、JRAの審判員が話していました」

 と言うベテラン競馬記者氏は、こう分析する。

「左回りの場合、競走馬はコーナーを“左手前”(左前脚を前に出してギャロップ)で回り、直線の直前で右手前、直線では再び左手前と、ステップを変えます。が、この馬はずっと左手前だったから、直線を前に加速した時、そのまま右へと逸走したのでしょう」

 しかもこの馬、クセが強いと言われていた。

「血統的には、母の父であるサンデーサイレンスが気難しいことで有名でした。マーキークラブはその血を色濃く受け継いだのかも」

 一方、放り出されて“死んだかと思った”と恐怖を語ったのは、浜中俊騎手(27)である。

「浜中騎手は、2012年に最多勝利騎手を勝ち取って以降、3年連続で100勝以上。GIもすでに7勝し、昨年の獲得賞金額は約23億1600万円という、日本競馬界のホープ。左上腕打撲という軽傷で済んで本当によかった」

 マーキークラブは2月14日まで出走停止となり、期間満了後に平地調教再審査。浜中騎手は斜行したことについて戒告処分となった。

「斜行だと過怠金付きの処分が普通ですが、今回は“クセ馬”ということを考慮されたのでしょう」

 浜中騎手にはとんだ災難だったが、“踏んだり蹴ったり”されなかっただけでも幸い。なにせ競馬界では、“鞍下三寸下は地獄”と言うそうなので――。

週刊新潮 2016年2月4日号掲載

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