「琴奨菊」美人妻は4カ国語を操る「エルメスの女」

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〈歴史上の戦争は二つの種類に分けられる。一つは正義の戦争であり、もう一つは不正義の戦争である〉

 毛沢東の大仰な言葉を引くのは些か気がひけるが、大相撲の世界ではこうした清と濁の二つの戦いが同時進行で進んでいた。先の特集記事でお伝えした通り、一つは、理事候補選を巡る水面下の熾烈な暗闘。そしてもう一つが、ファンを熱狂させた琴奨菊(31)の孤軍奮闘の取組である。

 横綱・鶴竜に土を付けたのを皮切りに、白鵬、日馬富士と横綱3人を次々と撃破。平幕力士なら金星を3つも挙げたことになるが、大関の場合は単なる白星に過ぎない。もっとも彼は人生の大一番、嫁取りにおいては、大金星を挙げたと言えよう。なぜなら角界では、勝負事で運気を強めてくれる女性や、絶世の美女のことも、隠語で「金星」と呼ぶからである。

琴奨菊関と祐未夫人

 昨年7月、琴奨菊が入籍した菊次祐未さん(29)=旧姓石田=は写真でご覧の通りの美貌の持ち主だ。しかも、故障続きで負け越しすら経験し、カド番の危機に瀕していた夫を不死鳥のように甦らせた。まさに大金星と評する所以である。

 実は琴奨菊は4年前、別の女性と一度、婚約会見を開いている。しかし「人生観のズレ」からわずか3カ月でスピード破局した手痛い過去がある。その意味でも、祐未さんとの結婚は徳俵からの逆転勝利だった。

「まだ実感が湧きません。大関はとても輝いて見えました。改めて、“すてきだなぁ”と惚れ直しました」

 1月24日夜、都内のホテルで開催された祝賀会。琴奨菊と並び、水色の着物姿で登場した祐未夫人はこう言って、笑みをこぼした。

 メディアに大きく取り上げられた彼女は、たおやかな着物美人のイメージを強く印象付けた。しかし一方で祐未さんは、和装とは全く趣の異なるファッション感覚も有している。

 胸元には、エルメスのバッファローホーンのペンダント。腕時計もやはりエルメスのケープコッドで、流し素麺に舌鼓を打つ。またある時は、エルメスの本店があるパリの街を闊歩。いずれの「エルメスの女(ひと)」も、他ならぬ祐未夫人、その人である。

 にわかに世間の耳目を集めた琴奨菊の美人妻はいかなる女性か。その素顔に迫る前に、初場所の大関の奮戦を振り返っておこう。

 初日から好スタートを切った琴奨菊は、勝ちっ放しで10日目を迎えた。この日の対戦相手は横綱・鶴竜。立ち合いで顔を張って、すぐに左を差すと、がぶり寄りで勝利を手中に収めた。

 圧巻はその翌日の横綱・白鵬との全勝対決だ。低い体勢で横綱に挑んだ琴奨菊は踏み込みよく左を差し、右で抱え込んでがぶり寄り。左に回り込んだ白鵬を休まずに攻め立て、最後は一気に土俵下に押しやったのだ。

 13日目には豊ノ島に苦杯を嘗めたものの、14勝1敗で見事、初優勝を遂げたわけである。スポーツ紙の相撲担当記者が解説する。

「今場所はとにかく出足が良かった。立ち合いが鋭く、先手を取り、がぶり寄り、左四つで廻しを取れていた。重量挙げやハンマー投げなどで、体幹の強化に努めた成果が花開いたのです」

 こうした精進に加え、

「やはり結婚も良い影響を与えていますよ。体調管理に心を砕いてくれる奥さんのおかげで、精神的に落ち着いて相撲を取っているように見える」(別の記者)

■縁は学生時代のアルバイト

 東京出身の祐未さんは父親の仕事の関係から、かつて4年間、スウェーデンで生活を送ったことがある。帰国後、学習院大学の英語英米文化学科に進学した。

「大学入学時にはすでに英語とスウェーデン語、ロシア語など4カ国語が堪能でした。大学では、“耳の不自由な人とも会話できるようになりたい”と言って、手話サークルに入会。手話も言語の一つと見なしていたのです。ゴミ拾いのボランティア活動にも積極的に参加していた。美人な上に気さくだから、男子から人気がありましたが、お付き合いをされた方はいなかったようです」(同級生)

 在学時にはオーストラリアに留学もした。海外志向が強いように見えるが、一方で日本の伝統文化への関心も高いという。琴奨菊の郷里、福岡・柳川の地元後援会の立花寛茂会長が語る。

「学生時代、祐未さんは、能の研究までしていた」

 大学時代の別の同級生もこう証言する。

「でも最大の趣味はやはり相撲です。国技館で本場所がある度に観戦に出かけていました。キャンパスでもよく相撲の話をした。“お相撲さんはかっこいい。私は守ってくれる男性がタイプ。あの大きな体で守ってもらえると思うと、興奮するの”と、力士の魅力について熱弁をふるっていました」

 その頃から、エルメスのブランドもお気に入りだったのか。卒業後はエルメス・ジャポンに就職している。

「都心のデパート内にあるエルメスの店舗で販売スタッフとして働いていました」(関係者)

 社員割引を活用して、「相撲女子」は「エルメスの女」となりしか。ともあれ、琴奨菊とはどのようにして出会ったのか。先の立花会長の話を聞こう。

「大学時代、相撲好きが高じて、両国国技館でアルバイトまでしていたそうです。その時、すべてのお茶屋さんに対して、丁寧に挨拶回りをしている琴奨菊の姿を目にし、人柄に惹かれ、好意を抱いた。3年ほど前、彼女の方から知人の伝手を頼って、大関を紹介してもらったと聞きました」

 確かに、彼女の知人もこう明かす。

「琴奨菊が婚約解消した時、祐未さんが彼の熱烈なファンであることを知っていた叔母さんが、“今がチャンスよ。アタックしなさい”と背中を押したというのです」

 そこから交際がスタート。2014年末、彼女は5年ほど勤めたエルメスを退職し、年明けから同居生活を送るようになった。昨年2月、婚約を発表し、7月、婚姻届を提出したのは前述の通りだ。

「その後、彼女は、琴奨菊の栄養管理を考え、『アスリートフードマイスター』の資格も取りました。胃に負担をかけないようにするため、油を使わずに肉料理や揚げ物ができるオーブンレンジも購入した」

 とは、琴奨菊が所属する佐渡ヶ嶽部屋の関係者だ。

「しかも毎晩、祐未さんが一生懸命、大関の体をマッサージして、ほぐしてあげている。かかとのひび割れを防ぐために、クリームを塗るのも彼女の仕事です」

 1月30日には都内で結婚披露宴が開かれ、その先には綱取りがかかる春場所が控えている。琴奨菊にとって見通しは決して甘くないが、最大の支えは祐未夫人の内助の功だろう。果して「相撲女子」は「エルメスの女」を経て、ついに「横綱の女房」へと昇り詰めるのか否か。

週刊新潮 2016年2月4日号掲載

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