TPPからアメリカが突如の離脱 日本列島が蒼ざめる「最悪シナリオ」2016(6)

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 足かけ5年、TPPが関係各国の大筋合意を見たのは、2015年10月のこと。国のエゴとエゴがぶつかる交渉の激しさは、甘利明・担当相のあまりに変わった髪の色が物語るが、ここへ来てまさかのシナリオが出てきた。

「アメリカが離脱する可能性が高くなっています」

 と語るのは、外務省の関係者だ。

「TPPを批准するには、議会の承認が必要。が、米議会は反対が多数を占めていて、批准できないままオバマは政権を去ることになりそうですし、次期候補のクリントン、トランプも反対を表明しているのです」

 TPP参加12カ国のうち、アメリカはGDP比で6割を占める。米国なかりせば、その経済規模は一気に半分以下に萎むのだ。 

「TPPはほとんど機能しなくなります。日本の損失は限りなく大きい」

 と言うのは、第一生命経済研究所の主席エコノミスト・永濱利廣氏である。

「参加によって得られると見込んでいた経済効果の大部分が失われます。また、アメリカは経済連携協定を結んでいる国にしかシェールガスを輸出しませんから、そのTPP離脱によって日本は、安価なエネルギーの入手が困難になってしまう可能性があります」

 オマケに、日本政府は、既にTPP対策として、15年度の補正予算に3400億円程度を付けることを閣議決定。16年度予算案にも巨額の対策費を組む見通しだが、アメリカに抜けられてはこれもパー。5年に亘る努力も泡と消えて、

「甘利担当相はノイローゼに、安倍首相はストレスが嵩じてまたお腹が痛くなる」(前出・外務省関係者)

 と大真面目に語られているほどなのである。

「何より問題なのは、中国の脅威。もともとTPPは中国が主導するAIIBに対抗するために、アメリカが基本合意した協定。アメリカが抜ければ、今以上に中国の経済的暴走を許すことになるのです」(永濱氏)

 アメリカによって完全に梯子を外されつつある日本。国論を二分した、あの「TPP大論争」が、今や単なる茶番のように見えてしまってならないのである。

「特集 日本列島が蒼ざめる『最悪シナリオ』2016」より

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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