尼崎事件・一家を乗っ取り搾取して殲滅する虐待のシステム [殺戮の女帝「角田美代子」暴力担当の供述調書120枚](3)

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 2012年の「尼崎事件」の主謀者・角田(すみだ)美代子(同年暮れに自死・享年64)を右腕として支え、無期懲役の一審判決が下されている「マサ」こと李正則(41)。その供述調書と自供書には、極悪非道の所行が生々しく残されていた。内縁の夫を通じて知り合い、アメとムチの手法でマサを「暴力装置」に仕立て上げた美代子は、マサの親戚に目をつけた――。

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「尼崎事件」の人物相関図

 「装置」がフル稼働したのは、美代子ファミリーが03年春、正則の継父の親戚(皆吉姓)にあたる香川県・高松市の谷本家に乗り込んだ時である。

〈(継父は)高松で暮らしている妹の皆吉初代(注・09年6月に死亡、享年59)の家が少し金持ちだという話をしていました。それに目をつけたのか、美代子は「マサがこんな風に悪く育ったのは皆吉家の責任や」と言い出しました〉(13年9月27日付)

 一家の乗っ取りの手順について正則は、13年9月19日に合同捜査本部に宛てて綴った「自供書」の中で、

〈美代子から、やったれよと言われました(怒鳴ったり、暴れたれ)〉

 と、以下のように振り返っている。のちに3体の白骨死体が発見された尼崎市の皆吉家に親族を集め、

〈美代子から私に、チョンチョンと合図が届き、私は立ち上がり、大声で叫び、喰ってかかり、コタツをけったり、つかみかかったりしました。頃合を見て、美代子が止めました。そして、私の事を、もうあんたらが知ってる昔のマサやないんや、今はうちの言う事しか聞かん子になっとんや〉

 などと恐れを抱かせた後、正則は先兵として四国へ上陸したのだった。

〈美代子からは、好き放題して、ぜい沢ざんまいして、とにかく困らしまくって、うちにすぐに助けを求める様にしてこいと言われ、夜、遅くに出発しました〉

■イカ、ウニ、コロッケが好物

 言いつけを忠実に守り、正則は現地で大暴れする。親類をもてなそうと食卓に並んだ料理を前に、

〈やかましい、なれなれしいすんな〉

 そう怒鳴り散らし、スナックや風俗店で散財させる。そのつど美代子とは連絡を取り、ついには、

〈初代がワーワー泣いて助けて下さい、すぐに来て下さいと美代子に何度も何度も頼み込んでました。私が酒を飲んでいると美代子から電話があり、ようやった、1~2日中にそっち行くからその調子でそのままやっとけ、うちの好きな食べ物(イカ、ウニ、コロッケ、高級チョコ、パン)(コーヒー、紅茶)などを揃えとけよと言われました〉

〈そして、美代子が現れると、初代は泣いて美代子にすがっていました〉

■親族同士で性行為

 後日、残りのファミリーも乗り込んで、正則の育て方についての「話し合い」が始まった。許可がないとトイレにも行けず、こじれる方向へと美代子が故意に会議を誘導し、夜を徹して口論させる。続いて「足止めされた」と因縁をつけて金銭を要求、毎日10万円ずつ巻き上げていった。家族間の口論はいつしか殴り合いへとエスカレートし、美代子による虐待も始まった。

〈初代と娘のマリコ(注・茉莉子=08年12月に死亡、享年26)が裸にさせられ、来る日も来る日も庭に出されて、夜になるとホースで水をかけ続けられたりもしました〉

 美代子の外出時には、裸のままで押し入れに閉じ込められることもあったという。さらに、親族同士の男女に性行為を強要し、

〈美代子は自分がさしたのにもかかわらず、よー見とりや、人前でこんな事平気で出来るということを。カチク(家畜)や、死んだれと言いました〉

■〈歯を抜けんか〉

 そんな中、03年3月には、初代の父・皆吉ノリさんが虐待の果てに尼崎で命を落とす(享年78)。正則は、美代子に言われるまま遺体を高松まで運び、地中に埋めた。その時、身元を特定されぬよう、こんな指示を受けたという。

〈穴に入れる前、美代子から連絡が入り、ノリさんの歯を抜けんか、顔が見えんようにしてペンチで抜けと言われるが、出来んと答えました〉(以上「自供書」より)

 直後の心情は、次のように記されている。

〈死体の処理をさせられたことで、もう角田美代子からは離れられないと覚悟を決めました〉(12年11月5日付)

 こうして、皆吉・谷本両家は美代子ファミリーに乗っ取られ、全財産を失った。さらに、ターゲットとなった猪俣、橋本、大江各家も同じく破滅へと追いやられ、美代子は少なくとも3億円程度を手にしたとみられている。

「特集 尼崎の大量殺害事件発覚から3年! 殺戮の女帝『角田美代子』暴力担当の供述調書120枚!」

週刊新潮 2015年11月19日号掲載

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