「不倫と殺人は書くな!」が亡夫の遺言だった「橋田壽賀子」の終活

エンタメ週刊新潮 2015年9月3号掲載

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 一度は引退を考えたものの、「書きながら柩に入るのが作家だ」と言われて翻意。数多(あまた)の名作を生み出したのは山崎豊子さんだが、先ごろテレビで「絶筆宣言」したと報じられた、脚本家の橋田壽賀子さん(90)はいかがか? その“真意”を伺ってみた。

 ***

 騒ぎの発端は、8月20日に放映された、朝の情報番組『ノンストップ!』である。インタビューの中で、

〈今のドラマ見てて、もう私の時代じゃないという気はしていますね。ホームドラマはもう生きられない〉

 と話した橋田さん。続けて、

〈だったらもう辞めてもいいなっていう気がします〉

 と述べたものだから、さぁ大変。『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』の大脚本家のこととあって、翌日のスポーツ紙には、〈絶筆宣言〉〈脚本家引退〉など、派手な見出しが躍ったのである。

■訃報は知らせない

 もっとも、

「もういろいろなところから電話がかかってきて、正直、困っているんです」

 と語るのは、橋田壽賀子さんご自身である。

「あれね、“今は仕事がない”と言っただけで、別に引退するわけじゃないんです。これからもお仕事さえいただけたら続けていくつもりですよ」

 と、橋田ファンなら胸を撫で下ろす一言をおっしゃるが、今のドラマ界には、思うところが多々あるのは事実とか。曰く、

「最近は、題材がえげつなくなってきていてドラマを見る気がしないんです。あくどかったり、オーバーじゃないと企画が通らないんですね。でもリアルでストレートなドラマを書いてきた私には出来ません。私の話は“ぬるま湯”ですから」

 そう笑いながら26年前に世を去った夫・岩崎嘉一氏の遺言を明かす。

「亡くなる前に“不倫と人殺しの話は絶対書くな!”と言われたんです。私はそれを守ってきましたし、それが通じなくなったら筆を折る時と思っていましたけど、今のドラマはまさにそればかりですね……。『相棒』も『科捜研の女』も初期のシリーズの方が面白かったな。『HERO』も見ましたけど、半分寝てしまいました。登場人物が騒ぎ過ぎで、よくわからなかった」

 そんな橋田さんがいま熱心なのは、むしろ人生の仕舞い支度の方だという。

「3~4年前から終活ノートを書き始めています。物品の整理は大体終わっていて、かばんも衣装も相当売ってしまいましたし、お墓も建て直しました。私は“あの人、いつの間にか消えちゃってたね”という死に方が一番好き。だから、新聞には訃報記事を載せないでほしい。『偲ぶ会』を開くのも絶対に嫌、と書き残しているんです」

 話を聞いていると、やはり二度と「橋田作品」を見られないような気がするが、

「そんなことないですよ。今はいったんお休みしているだけ。若い俳優さんも全然知らないけど、スマップだったら存じ上げています。スマップのメンバーが出てくださるのなら、また書きたいなと思いますけど」

 と笑う橋田さん。

 大脚本家も時代の変化には抗(あらが)えぬということかもしれないけれど、ここはキムタクあたりにひと肌脱いでもらい、もう一度「ホームドラマの王道」を見せてもらいたいものである。

「ワイド特集 晩夏のサバイバー」より