洞窟座敷で原始時代を体感 宿泊したら自慢できる「日本の変な宿」紀行(2)

旅・街歩き週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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 いよいよ始まる冬の旅行シーズン。多くの人を悩ませるのが宿選びではなかろうか。ここに紹介するのは、国内でも唯一無二の体験ができる「変な宿」。泊った後は、ついつい他人に自慢したくなる。そんな、一癖も二癖もある宿ばかりを、本誌記者が訪ね歩いた。

 ここまで、氷の宿は開業遅れで断念、硫黄のせいで崩れかけた温泉に恐る恐る宿泊。確かに肌はツルツルになった、と自分を慰め、次は日本初の屋上露天風呂でリベンジである。名鉄内海駅からタクシーで5分、「粛海風」(愛知県南知多町)に着いたが、7階建ての建物は何の変哲もない。そこに、

「目玉は屋上にある『天上の湯』ですから」

 と案内してくれたのは、榎本国宏社長だ。

「屋上に露天風呂を作ったのは私が最初です。バブルの真っ最中で土地代が高く、新しい土地に風呂を作れなかったのが真相ですがね。星野仙一さんがビールのCMで使ってくれ、人気に火がついたんです」

「粛 海風」(愛知県南知多町)。
1泊2食付2万1600円~(2名から)
TEL:0569-62-2222

 能舞台を模したという浴槽は7×9メートル。湯口に神社仏閣風の屋根があるほか、遮るものがない。眼の前の伊勢湾から遥か渥美半島まで展望できる。天空にいるような開放感で、寒さも気にならないほどだ。嬉しい特典があると教えてくれたのは女将さんで、

「毎日、午後4時から6時の間にお入りいただいた方には、地酒『國盛』をサービスしています」

 残念! 時間を過ぎている。伊勢湾に落ちる夕日を眺めながらの1杯はたまらないことだろう。

「みなさん、極楽とおっしゃいます。おかわりを欲しがる方もいますが、酔うと危ないので1杯限定です」

 かわりに夕食で酔わせてもらうことにした。伊勢湾で獲れた白身魚や、歯ごたえと香りを楽しめるミル貝の刺身。それにプリプリした食感がクセになる、ふぐの煮こごりを肴に。

■洞窟座敷で舌鼓

 美食に与かると、また美味いものが食べたくなるのが人間の性。伊勢湾の対岸、近鉄津新町駅から車で10分の「磨洞温泉 涼風荘」(三重県津市)へと向かった。ただ美味いだけでは味気ないが、ここでは松阪牛や伊勢湾の海の幸を洞窟の中で食べられるという。伊藤真司社長から、

「江戸時代から昭和まで磨き砂を採掘していた津には、洞窟が点在しているんです。うちの旅館にある洞窟は長さ250メートルで、主に宴会場として使っています」

「磨洞温泉涼風荘」(三重県津市)。
1泊2食付8000円(税別)~
TEL:059-228-8413

 と聞いて期待が高まる。洞窟内の気温は年中20度前後だそうだが、実際、快適で、すぐにダウンを脱いだ。入口から30メートルほどで最大120人を収容できるという“洞窟座敷”に着く。松阪牛と伊勢湾の幸の洗練度は現代風だったが、ロケーションは明らかに原始時代であった。

「特集 宿泊したら自慢できる『日本の変な宿』紀行」より