着工「リニア新幹線」を待ち受ける「5000人地権者」

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 いよいよ、始まった。12月17日、リニア中央新幹線の東西の起点となる品川駅と名古屋駅の周辺で、工事の安全祈願式が行われたのだ。2027年の開業へ向けて着工したわけだが、その前には“用地取得”という問題が横たわる。

「柘植康英・JR東海社長は11月の定例会見で“7都県にまたがる建設予定地の地権者は、登記簿上約5000人”と明らかにした。ただその全てを買収するわけではない」(経済部記者)

 というのも、リニア新幹線が走るルートの86%はトンネルで、その多くは40メートル以深の“大深度”。

「大深度を利用する際は、基本的には事前の補償はいらない」(同)

 例えば名古屋市の場合、地権者は約700人で、建物は約70棟。中でもリニア名古屋駅工事は、

「上を走る東海道新幹線や在来線を止めることなく行うため、10年以上の時間を要します」(JR東海)

 計画によれば、新駅は現在の名古屋駅の地下30メートルをほぼ東西に貫き、敷地面積は約3万5000平方メートル。

「名古屋駅太閤通口界隈は、別名“駅裏”。ファッションヘルスなどがある、名古屋でも知られた風俗街です」(地元紙記者)

 下手すりゃ風俗街は壊滅? ただし、

「これから中心線測量等を行った上で、工事エリアのうち、どこを買い取り、どこに地下利用の“区分地上権”を設定するかを決めます」(JR東海)

 一方、用地補償を睨んでか、“駅裏”の地価はこの1年で10%も上昇。

「用地取得費は、最新の公示地価等をふまえ、東京~名古屋間全体で約3400億円」(同)

 12月18日には、JR東海と愛知県・名古屋市との間で用地取得等に関する協力の基本合意も行われたが、果たしてそれで収まるやら……工事とは別の戦いも、始まったばかりなのである。

週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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