『苦海浄土』の書き手を育んだもの/『葭の渚』

食・暮らし

『苦海浄土』の、たゆたう水の流れに似た語りのリズムをさらにゆったりと、水俣や天草の言葉を美しく響かせてつづられる自伝である。幼年期のことはたびたび作品に描かれているが、読みながら何度も「ああ」とうなずくところがあった。ここで描かれる少女時代の体験があったからこそ、彼女は他に類のない『苦海浄土』を書けたと改めて思う。

 とりわけ大きいできごととして、実家の零落がある。石屋をいとなみ、道路や港湾の建設を請け負っていた祖父は、工事の完璧は期すが金勘定のできない人で、道子が小学二年生の時に破産する。

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