なぜパ・リーグの観客動員数は“セ・リーグに肉薄”するまでに増えたのか? 「地域密着」だけではないセ球団との大きな違い

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 プロ野球の2026年シーズンも終わりました。この時期になると発表される公式戦入場者数ですが、昨年に続いて過去最高を記録しています。テレビ中継が少なくなった分、球場に足を運ぶ人が増えたのも要因の一つですが、球団ごとに考え抜いた戦略がありました。今週はパ・リーグの観客動員について、東海ラジオで35年間、プロ野球実況を務めた村上和宏さんが解説します。

過去最多の入場者

 今年の日本シリーズは福岡ソフトバンクホークスが日本一に輝き、3月27日に開幕したプロ野球は今年の全日程が終了しました。クライマックスシリーズと日本シリーズを除いた12球団合計の公式戦入場者数は、3年連続で過去最多を更新しています(2717万7247人)。

 セ・リーグでは、成績低迷と開幕前からの薬物騒動が響いた広島カープが、去年より10万人以上減らしましたが(190万9832人)、パ・リーグは千葉ロッテマリーンズを除く5球団が前年よりも観客を増やしたことで、12球団トータルでは、前年に比べて13万人余り増加しています。

 新型コロナウイルスの影響で2020年シーズンは開幕も遅れ、しばらくは無観客。さらに試合数削減も余儀なくされたことで、各球団は急激な資金難に見舞われました。翌21年と22年も「ソーシャルディスタンス」のため、販売できる座席数に制限が加わり、厳しい経営が続きました。一連のコロナウイルス対策の制限がなくなった24年から、観客動員数は3年連続で更新されたことになります。

 中日ドラゴンズの営業担当者が、「コロナ禍で被った減収をまだカバーしきれてはいないが、ようやく元の姿に戻ってきた」と語るように、フロントは胸をなでおろしています。

 今回は「プロ野球の観客動員数」について考察します。

 シーズン中、テレビを点ければどこかの地上波で、連日のように巨人戦が中継されていた1990年代前半。プロ野球関係者、特にセ・リーグ球団は「プロ野球が国民の娯楽の王者」という意識を持っていました。事実、視聴率が30%を超えることも珍しくなく、球場には観客が押し寄せていました。

 当時はまだネットが普及しておらず、チケットはプレイガイドで買うのが当たり前でした。名古屋では人気カードである中日・巨人戦の前売りチケット販売日になると、夜明け前から人が集まり始め、販売開始時間前には長蛇の列ができる光景が日常でした。

 しかも、ナゴヤ球場は巨人戦でなくても連日満員御礼。当時の営業担当者の中には「チケットを買っていただく」というより、「チケットを売ってやる」という意識をもっているのではないかと疑うような態度の人もいました。つまり、球団側がさほど企業努力をしなくても観客が集まっていたのです。しかし、冷静にこの状況を見つめていた心ある一部の球団職員は、逆に危機感を持って険しい表情でこう話されたのを覚えています。

「確かに(当時のナゴヤ球場で満員とされた)3万5000人が毎日、球場に来てくれている。しかし、現状では50万人がチケットを手に入れたいと思っているが、それが30万人に減り、20万人、10万人、ついには3万5000人になることだって十分あり得る。にもかかわらず、“チケットを売ってやる”という今の営業の態度では、チケットを求める人が3万5000人を切った時、買ってくださいと言っても売れるとは思わない」

 1997年にドラゴンズの本拠地がナゴヤドーム(当時の公称定員は4万500人)に移ると、定員増加とドーム球場の物珍しさから、前年比5万3000人ほど観客が増加しましたが、その後はじり貧の状態になり、5年後には97年比で約2万人減少しました。このころになると営業担当者が記者席に現れ「チケットあるけど買いませんか」と声を掛けるようになりました。

 それまで、リスナープレゼントのためにチケットを手配しようとしても「そのカードは人気だから無理ですね」と無下に断られていたのが、どのカードでもウェルカムと、態度がガラッと変わったのです。また、球団OBの自宅にチケットが大量に送られてくるようになりました。ある解説者は「チケットをくれるのはありがたいけど、量が問題だよな」と本音を漏らしていました。

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