なぜ中国は“高市首相も見たがる”ドラマ「VIVANT」を激烈に非難するのか? 「ポケモン」「ヒロアカ」まで政治問題化させる“認知戦”の実態
中国の政府、メディア、そしてネット世論がTBSの日曜劇場「VIVANT」第2シーズンに対する反発を強めている。中国の専門家は「中国側が強硬姿勢を強めているのに対し、TBSを筆頭に日本側は少し脇が甘い傾向がある」と警鐘を鳴らす。今後、中国側の批判がさらに過熱する可能性があるのは、11月8日に放映予定の最終回と、意外なことに12月31日のNHK「紅白歌合戦」だという。一体、中国で何が起きているのだろうか。(前後編の前編)
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10月4日、「VIVANT」の第19話が放送。自衛隊の諜報組織”別班”の隊員が秘密情報組織“シンシー”に拘束され、拷問を受けるシーンが流された。
右手の指をすべて切断し、刃物で腹部や胸部を傷つけるという残虐な描写もあった。
10月14日、衆議院予算委員会で参政党の吉川里奈議員が高市早苗首相に、「Netflix」のドラマ「ダウンタイム」を視聴しているか質問した。
これに高市首相は「拝見しておりません」と回答し、「録画している『VIVANT』も年末と正月にまとめ見できればいいなと思って。ちょっと時間の都合でまったく拝見できていません」と付け加えた。
すると10月25日、「中国中央テレビ(CCTV)」のニュースアカウント「央視新聞」が「VIVANT」の拷問シーンを強く批判する「論評」を配信した。
『ピークアウトする中国「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書:梶谷懐氏との共著)などの著書で知られるジャーナリスト・千葉大学客員教授・明治大学客員研究員の高口康太氏は、中国を取材して「月刊文藝春秋」や「日経クロストレンド」に寄稿するほか、データで中国を読み解くニュースサイト「The Tokyo Desk on China(ザ・トーキョー・デスク・オン・チャイナ)」を運営している。
コナンやポケモンも批判
高口氏は「『中国中央テレビ』は当然ですが中国の国営メディアです。そのニュースアカウント『央視新聞』が名指しで『VIVANT』を批判したことは、日本人が考えるよりはるかに重い意味を持っています」と指摘する。
「2020年、日本のコミック『僕のヒーローアカデミア』に対して中国は批判を強めました。“志賀丸太”という登場人物の名前を問題視したのです。旧日本軍の731部隊が人体実験の被験者を『丸太』と呼んでおり、それを連想させるという理由でした。そのため今年、アニメ放送30周年を迎えた『名探偵コナン』が『僕のヒーローアカデミア』とコラボレーションを展開すると、中国のネットユーザーなどから『中国を侮辱した作品とコラボするのか』と『名探偵コナン』にも批判が集まったのです」
高口氏は「また今年、靖国神社でのポケモンカードの体験会がポケモンの公式サイトに掲載された(※その後中止)ことも中国では問題視されました」と言う。
「2月には中国各地の漫展(コミックイベント)の主催者が、『僕のヒーローアカデミア』とコラボした『名探偵コナン』のコスプレや関連グッズの販売を禁止しました。さらに中国軍のニュースサイト『中国軍網』も名探偵コナンとポケモンの問題を取り上げ、『日本軍国主義は文化・スポーツ分野にも浸透している』と批判したのです。今回の『VIVANT』の問題も、中国の官製メディアは以前から日本の娯楽・エンターテインメントを政治問題化する傾向を強めており、その流れが加速しているという現状認識が欠かせないと思います」
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