ついに日本でも「007」が誕生するか? 中国や北朝鮮は警戒モード…「諜報機関」新設への根強い反対論を前に「高市首相の腹案」
エスピオナージ機関は不在
例えば、ロシアの在日大使館は旧KGB(国家安保委員会、現FSBなど)と、「伝説のスパイ」として露国内で英雄視されているゾルゲが所属したGRU(軍参謀本部情報総局)の二大情報機関に所属する工作員が、職員の三分の二を占めていると言われる。日本の大使館とは、全く次元が異なるのである。前出の政府関係者は、こう指摘する。
「日本には他国で活動する情報機関がなく、テロ情報限定とはいえCTU-Jが行きがかり上、外務省内に置かれたこともあり、外務官僚には『海外での情報活動は自分たちのテリトリー』という“縄張り意識”が根強くあります。大使館や領事館といった在外公館に、書記官などで派遣されて来る警察庁や防衛省の人間には、場所を『貸してやっている』との思いが強い」
その上で「新たな省庁をつくるくらいなら、CTU-Jからテロの限定条件を外し、情報全般を扱う外務省内の局に格上げすべきという意見も省内では根強いようです」と語る。また自民党議員の元秘書は「国情局の誕生に際しては、日本版『CIA』というフレーズも散見されましたが、実態は違います」と話す。
CIAは国家安全保障法に基づく大統領令に「国外における人的情報及び適切な手段による情報収集を行う」などと明文化されており、MI6も情報機関法で「英国外における情報収集及びその他の行動を行う」と規定されている。だが国情局の根拠法である国家情報会議設置法には、海外で情報収集するための規定がない。
「つまりCIAのような対外情報機関(エスピオナージ機関)では決してないのです。だからこそ、日本版『CIA』という比喩には、ものすごく違和感があるのです」(同政府関係者)
実は、国情局がモデルとしているのはCIAではなく、米国のODNI(国家情報長官室)と呼ばれる情報機関だ。米国内にはCIAやFBIのほかNSA(国家安全保障局)など、17もの情報機関があるが、これらの“縦割り体質”が大きな弊害となり、2001年の米同時多発テロを未然に防げなかったことから、情報一元化のため各機関を束ねる「司令塔」として2004年にODNIが設立された。
アーミテージ氏の批判受け
一方、日本の情報機関にも縦割りの問題が存在することは、同盟国である米国で、最も日本の内情を知る知日派の大物にして「共和党穏健派の重鎮」と称された故リチャード・アーミテージ元米国務副長官も憂いている。
2000年10月の第1次「アーミテージ・ナイ報告書」以降、一昨年4月の第6次報告書まで、繰り返しその点を指摘しており、日本政府に改善を求め続けてきた。第6次では日本の政府機関が縦割りであるために、情報共有が滞っている事実を「日米同盟の最大の弱点」と批判し、内閣官房の下に省庁横断型の一元的な情報分析機関を設置するよう迫っていた。
このため昨年、自民党と日本維新の会は連立政権の樹立に当たり、内調を国家情報局へ格上げすることで合意。国情局が立ち上げられたというわけだ。他方で先に述べたように、日本には国外に“打って出る”形の情報機関は存在しない。アーミテージ氏は報告書で日本を「インテリジェンスの買い手(情報をもらう側)に終始している」とも指弾。「日本は情報のコンシューマー(消費者)ではあるが、サプライヤー(供給者)ではない」とする西側諸国の不満を追認してきた。
だが、与党関係者は「実は戦略本部が提言する対外情報庁の新設には反対論が根強い」と話す。その背景にはスポーツ庁や消費者庁、子ども家庭庁など新設された官庁が「既存の省庁と業務の重複も多く“お題目”だけが先行して実体が伴っていないため、ハードより先にソフト、つまり人材を育てるのが先ではないか」(同政府関係者)との意見があるためだ。
「そこで総理周辺が“腹案”としているとされているのが、『安倍政権の後継を自任する高市政権の肝いり』(同与党関係者)で発足した国情局に、対外情報部門を新設し、公安庁や公安警察の係官のうち、外事の担当でFBI研修を受けた経験者とCTU-Jの人材を選抜し、集約するというものなのです」(前出の与党関係者)
有識者会議の見解は来年1月にもまとめられる予定で、政府は今年度内に新戦略を公表する方針だが、対外情報を担当するセクションが、果たして形になるのか否か。国内の情報当局者ばかりでなく、高市総理を危険視し、警戒を強める中国や北朝鮮などの諸外国も注視しているとみられる。
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