カリフォルニアなどでは暴動が起きても不思議ではないレベルまでガソリンが高騰している・・中間選挙目前、アメリカの庶民が余儀なくされる現在進行形の「残酷物語」
米国大統領の任期である4年の中間年に行なわれる「中間選挙」が、11月3日に迫っている。上院(定数100)は改選3分の1、下院(435)は全議席を争って選挙戦が繰り広げられている最中で、従来、2年間の政権運営に批判が集まることから与党が下院で議席減となるケースが大半であった。
現在は上下院とも共和党が多数を占めているのだが、かりに下院だけでもひっくり返れば「ねじれ」が生じ、残り2年となるトランプ政権に少なからず影響が出ることになろう。
そんな折、両党の選挙戦を支える庶民の生活からは、怨嗟の声が聞こえてくるのだ──。
***
米国では目下、バイデン政権時代から続くインフレが収まらず、とりわけ庶民は苦難の生活を強いられているのが実情だ。米労働省が10月14日に発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で3・7%上昇、前月比では0・6%の増加となっている。
米国駐在歴が長く、現在はワシントンで勤務する日系企業の社員によれば、
「この一年でいえば、物価は高値のまま横ばい状態といえますが、10年前と比べれば隔世の感があります」
とのことで、
「たとえばラーメン。10年前だとチップ込みで一杯15ドル(当時のレートで約1650円)程度だったところが、現在は24ドル(約3768円)ほどに跳ね上がっています。またマクドナルドのビッグマックセットも、以前は8ドル(当時約880円)だったものが今は10ドル(約1570円)を超えてしまいました」(同)
「買い溜め」が始まっている
食料品もさることながら、直近で生活に打撃を与えているのがエネルギー価格の上昇である。実際に9月のガソリン価格は前月比で9・1%上昇し、10月も高止まりで推移している。
「対イラン戦争の影響で現在、全米平均は1ガロン(3・785リットル)あたり4ドル(628円)ほどに跳ね上がっています。私の住むメリーランド州でも3ドル後半で推移していて、カリフォルニアやアラスカでは1ガロン10ドル近くまで高騰している地域もある。それこそ暴動が起きても不思議ではないレベルです」
とは、先の駐在員。またニューヨーク在住のジャーナリスト・津山恵子氏は、
「発表された労働省のデータでは、肉やフルーツ、野菜といった輸入品が混じる食品の値上がりが目立ちます。これらの生産コストはほぼ変わっていませんが、トラック輸送に掛かるガソリン・ディーゼル軽油代が価格にそのまま上乗せされているのです。日本のように企業努力で価格を抑える文化は米国企業にはなく、増えた輸送コストは即座に価格転嫁されます」
そのため、
「庶民は『今後も値上がりする』という前提で、買い溜めをするようになっています。ウォルマートなどの大型スーパーが出している週替わりの安売りチラシやオンラインの割引情報をまめにチェックし、肉や卵、トイレットペーパーなどを安くなったタイミングでまとめ買いし、生活を防衛しています」(同)
もう「アメリカンドリーム」は存在しない
さらにエネルギー価格についても、
「車社会の米国で、公共交通機関が発達しているのはニューヨーク、ボストン、シカゴぐらい。全米のほぼすべてがガソリン高に苦しんでいます。車だけでなく、国内の重要な移動手段である航空にも深刻な影響が生じています。9月の燃料油は前年同月比で74・2%も上昇している。私の知人は、あまりに航空運賃が高いため『親戚の葬式にも行かれない』と嘆いていました」(同)
住宅事情もまた深刻である。先述した9月のCPIでは、住居費も前年同月比3・2%と、前月の3%から上昇。一方で住宅ローンの30年固定金利は7%台の高水準が続くなど、購入環境も悪化している。
先の津山氏は、
「ガソリン代の影響で木材や鋼材、タイルなどの資材も値上がりし、建築・購入コストが猛烈に上昇しています。かつてのように『車を買い、結婚して家庭を持ち、家を購入する』というアメリカンドリームはもう存在しない。若者たちはそう感じているのです」
専横を極めるトランプ政権のもとでは、まさしく「地獄の沙汰も金次第」。庶民の「残酷物語」は、まだまだ続くのであろうか。
新潮QUEで配信中の記事【「中間選挙」目前の惨状 ラーメンに手が届かず、飛行機に乗れず、医者にもかかれず……米国の庶民が余儀なくされる現在進行形の「残酷物語」】では、悪名高い米国の高額な医療費の実態や、選挙後の市民生活の展望について詳しく報じている。


