高市首相も警告「PHP騒動」はくすぶり続けている…識者が指摘する“多すぎる課題”
首相のホームページからアダルトサイトに至るまで、ウェブサイトが軒並み「メンテナンス中」となったのだから前代未聞である。世界中を巻き込んだ“PHP騒動”の余燼は、今なおウェブ上でくすぶっている。サイバー攻撃は毎日のように繰り返され、個人情報がひたすら流出し続ける現代社会。普通に暮らしているだけでは見えてこないサイバー空間で何が起こっているのか。そして、“PHP騒動”と同様の事態が発生する可能性はないのか。識者たちの分析で課題をあぶり出す。
徹夜作業を余儀なくされたエンジニア
何のことかよくわからないが、何やら大変なことになっているらしい――。10月21日の夜、高市早苗首相が〈皆様に、今夜に対応して頂きたい大至急のお願いです〉とSNSに書き込んだ内容に触れて、そう思った人は多いはずである。
実際に多くのサイトが「メンテナンス中」となり、通常のサービスを受けられない状態が続いたのはご存知の通り。降ってわいた事態に徹夜作業を余儀なくされたエンジニアも数知れないという。
「高市首相の投稿によって、現場の方々はかなり助けられたと聞いています」
そう語るのは、独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)セキュリティセンター対処調整部の大久保直人氏。
「各会社のシステム管理担当者が“サイトを閉じましょう”と幹部に進言するにあたって、“総理も言ってますから”と言い添えることができたでしょうから。迅速な対応をする上で有用だったはずです。今後は首相の発言が無くとも、経営者自らサイトを停止してでも脆弱性を解消させる英断を下して欲しいですね」(同)
PHPは世界中のサイトの約7割に使用されているという。ありとあらゆるサイトが緊急メンテナンスで事態に対応したのが功を奏したか、攻撃の被害にあったという事例は、今のところない(10月26日現在)。
従来の100倍近くの効率で脆弱性を発見
もっとも、にわかに注目された「脆弱性」だが、ウェブ上で脆弱性が発見される事自体は、決して珍しくない。
「Windowsを開発しているマイクロソフトは、毎月脆弱性への対応状況を公表しています。例えば今年10月には約1400件の脆弱性に対応しています。AIの活用により、従来の100倍近くの効率で発見できるようになっていると思います」(神戸大学名誉教授の森井昌克氏)
ここでもAIの躍進が一役買っているわけだが、
「生成AIによって、専門的な知識がなくてもサイバー攻撃を行えるようになってしまいました。例えば昨年、10代の高校生が楽天モバイルを攻撃して“不正契約”を繰り返す事件も起こっています」(EGセキュアソリューションズ株式会社取締役CTOの徳丸浩氏)
オープンソースソフトウェアが抱える「資金的な問題」
“守るのもAIなら、攻めるのもAI”という時代に起こった“PHP騒動”。情報セキュリティに詳しい立命館大学の上原哲太郎教授は、これを機に考えなければならない問題があると指摘する。
「PHPは“オープンソースソフトウェア”と呼ばれます。これは、プログラムの設計図にあたるソースコードが公開されており、誰もが無料で利用したり、改良したりできるソフトウェアのことです。インターネットの世界は、こうしたオープンソースソフトウェアに大きく支えられています」
そして、この点にこそ構造的な“脆弱性”があるという。
「オープンソースソフトウェアには、開発を支える財団が存在することが多い。財団は企業などからの寄付によって運営されています。しかし、多くの企業がその恩恵を受けているにも関わらず、ソフトウェアの開発や安全性の維持に必要な資金が十分に確保できているとは限らないのです」(同)
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新潮QUEで配信中の記事【“PHPだけではない”セキュリティの専門家が指摘するサイバー空間で企業が取り組むべきこと】では、PHPと同様のオープンソースソフトウェアが留意すべき脆弱性や、暗号資産の持つリスク、そして企業側が取り組むべき課題について、専門家のより詳しい解説を報じている。


