企業価値は300兆円? 急成長の「アンソロピック」は「買い」か「見送り」か

ビジネス

  • ブックマーク

 今さらだが、アメリカのテクノロジー企業の株価はケタ違いである。6月に新規上場したスペースXの時価総額は186兆円。これでも驚きの額なのに、11月には同社をさらに超えてきそうな新規株式公開(IPO)が予定されている。生成AI企業のアンソロピック社である。

 改めて説明しておくと、同社は「クロード・ミュトス」などの生成AIを運営しており、米軍がベネズエラのマドゥロ前大統領を急襲・拘束した際には、同社のAIが使用されたことが知られている。

 会社が設立されたのは2021年の1月。オープンAI副社長だったダリオ・アモディ氏らが立ち上げ、先輩格であるオープンAIを出し抜く勢いで成長してきた。そして、今年6月には米SEC(証券取引委員会)に対し、上場に向けた申請書類草案を提出。前後して機関投資家などに向けた説明では、驚きの業績を伝えているという。

 それによると、同社の今年第1四半期の売上高は47億ドル(約7400億円)だったが、次の第2四半期では115億ドル(約1兆8000億円)。そして年末までに年換算売上高は1000億~1200億ドルに達するといわれる。日本円にして最大18兆9000億円だ。

「買い」か「見送り」か

 ただし、赤字も半端ではなく、昨年は6兆6000億円もの損失を出している。一言で言えば、猛烈に稼いで怒濤のごとく損失を出している会社なのだ。今年9月アモディ氏は、AIの開発ペースを“調整する必要がある”と慎重論を持ち出したが、本音は、いくら稼いでも湯水のごとく金が出てゆくことにいら立っているのかもしれない。

 気になるのは上場した場合の株価である。ウォールストリート・ジャーナルなどが伝えたところによるとアンソロピック社の企業価値は、1.5兆~2兆ドル(約316兆円)に達しているという。そして、上場となれば日本の個人投資家もIPOに参加できる。では、「買い」なのか「見送り」なのか。

 マーケットアナリストの田口れん太氏が言う。

「私はIPOに参加するのもありだとみています。アンソロピックの成長力は揺るぎない評価がある。もし、時価総額が1.5兆ドル程度なら投資家にとっては“安く買えるレベル”です」

 仮に時価総額1.5兆ドルぐらいでの上場なら、アメリカで8番目ぐらいの大きさの会社になる。

「これは、機関投資家のファンドマネージャーならファンドへの組み入れを検討しなければいけないサイズです。つまり、上場後も“買い需要”が強いということ」(同)

 生成AIは、投資家にも良い思いをさせてくれるか。

週刊新潮 2026年10月29日・11月5日号掲載