「日本社会特有の“不安”が背景に…」 欧米メディアが論じた「ちいかわ」大ヒットの理由 関心は「アジア圏以外でも通用するのか?」
「ちいかわ」の勢いが止まらない。興行通信社によると「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」は、観客動員数1176万人、興行収入171億円を突破しているという。もはや、国民的人気キャラクターになったと言っても過言ではないが、海外のメディアもその人気ぶりを独自の筆致で分析している。
【湯浅大輝/フリージャーナリスト】
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The Economistも驚く「ちいかわの暗さ」
イギリスの経済誌、The Economistは『不安な時代に愛されるちいかわ、日本の大ヒット作に』※1という記事を掲載した。
The Economistが注目したのは、ちいかわが5歳児向けに作られたかのような見た目の映画の割に、その筋書きが驚くほど“暗い”ことだ。人魚を食べて不老不死になった島民に復讐するべく、彼らを捜し回る海の怪物(セイレーン)。それに対峙する、『槍のような武器』を手にした大きな目を持つ生き物たち。彼らの中で、もっとも小さく、ハムスターのようにふわふわした見た目の「ちいかわ」は、あまりに大変な任務を前に圧倒され、しょっちゅう泣いてしまう。
ちいかわやハチワレ、うさぎなどの「kawaii」キャラクターたちが生きる世界が苦痛に満ちていることも同誌は見逃さない。そもそも、ちいかわたちは安定した職に就いているわけではない。草むしりなど、成果ベースでお金を稼ぐ「ギグ・エコノミー」でなんとか生計を立てている。
その中でもちいかわはほとんど言葉を話せない、か弱いキャラクターとして描かれているが、雄弁なハチワレと友情を結ぶことで、なんとか生きている。ちいかわの「脆さ」と自分自身を重ね合わせているファンが多い、と同誌は分析しているのだ。
実際、The Economistはハワイ大学ウエストオアフ校でポピュラーカルチャーを研究するジェイソン・チュン氏の「世界は不安に満ちている、それでもちいかわは『不安になってもいいんだよ』と語りかけてくれるのだ」というコメントを紹介する。ちいかわが、時に陰惨で、不安だらけな生そのものを抱擁してくれることに、ファンは魅せられている、と記事では言外に匂わせている。
ではその「不安」は、視聴者の妄想ではなく、現実社会を反映したものなのだろうか。米CNNは『なぜ人々はちいかわに夢中になるのか』※2という記事の中で、ちいかわ人気の背景には、日本社会特有の不安もある、と分析する。人生を大きく左右する大学入試や資格取得のプレッシャー、他の先進国と比べて伸び悩む賃金……。CNNも前述のチュン氏の取材コメントを引用する形で、「(日本社会には)何事も黙って耐えなければならない、という文化的圧力がある」との見解を示している。
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