「日本社会特有の“不安”が背景に…」 欧米メディアが論じた「ちいかわ」大ヒットの理由 関心は「アジア圏以外でも通用するのか?」

エンタメ

  • ブックマーク

「kawaii」輸出は日本のお家芸

 最後に、経済メディアらしく、ちいかわ大ヒットの要因をビジネス面から分析している海外メディアによる考察も紹介しよう。米Bloombergのコラムニスト、リーディー・ガロウド氏は、ちいかわ原作者のナガノ氏が元々ネットにイラストを投稿する、「LINEスタンプのクリエイター」だったことに注目している※5。

 SNSの浸透により、イラストレーターにとっては発表の場が増えたが、その分競争も激しくなった。リーディー氏は、ナガノ氏のイラストがこうした厳しい競争環境の中からSNSユーザーの支持を得て、今日の人気を博している点に注目している。つまり、ちいかわは『ハローキティ』や『ピカチュウ』のような大企業発のキャラクターとは異なり、優れた個人のクリエイターによるアイデアである点に、今日のビジネスを考えるヒントがあるというのだ。

 このことから、同氏は今後のキャラクターライセンス企業は、自社で新しいアイデアを発明するだけでなく、オンラインで急成長しているキャラクターをいち早く発見することが、ビジネスチャンスに繋がり得る、と見ている。

 中国をはじめ、韓国や台湾など、アジア各地で人気を広げてきたちいかわが次に狙うのは、欧米だ。

 CNNはちいかわのライセンスを持つSpiralcute社がロサンゼルスに事務所を構え、米玩具大手のJazwaresと提携するなど、商機を虎視眈々と狙っていると報じている。

 Bloombergのリーディー氏は、欧米で成功する上では、これまでちいかわを支えてきた「自然発生的な人気」をアジア圏以外でも再現できるかが課題だ、と見る。日本では人々がネットで自然にちいかわのイラストに出会い、訪日旅行客が街角でちいかわを発見してきた。こうした形で、欧米でも「ちいかわとの出会い」の接点を増やすことがカギになる、と分析しているのだ。

 CNNが「すでに欧米圏のインスタグラムやTikTokでちいかわファンの交流が始まっている。オハイオ州では500人ほどが集まるリアル交流会も開催された」と伝えているように、ちいかわ人気が欧米でどれほど通用するのかは見ものだ。

 いずれにせよ、日本人の期待も大きいだろう。The Economistが記したように「kawaii」は日本が生み出した文化輸出品の中で、もっとも成功したもののひとつだから。

【引用元】

※1Chiikawa, star of a Japanese blockbuster, appeals in anxious times The Economist 2026年9月10日https://www.economist.com/culture/2026/09/10/chiikawa-star-of-a-japanese-blockbuster-appeals-in-anxious-times?utm_campaign=shared_article

※2 What’s the obsession behind Chiikawa? CNN2026年 9月25日 https://edition.cnn.com/style/chiikawa-hnk-intl-spc

※3[First in Shanghai] A City in Total 'Hobby Obsession Mode' City News Service 2025年12月9日
https://www.citynewsservice.cn/articles/cns/lifestyle/first-in-china/first-in-shanghai-a-city-in-total-hobby-obsession-mode-env00ppm

※4 For Stressed Young Chinese, Chiikawa Toys Are Digital Ibuprofen SIXTH TONE 2024年5月16日
https://www.sixthtone.com/news/1015165

※5 In Japan, Odysseus Is Scared of Tiny, Cute Chiikawa Bloomberg 2026年7月28日
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2026-07-27/japan-movie-hit-odysseus-is-scared-of-tiny-cute-chiikawa?srnd=undefined

湯浅大輝(ゆあさ だいき)
フリージャーナリスト。同志社大学在学中に米アリゾナ州立大学へ交換留学。卒業後、記者としてのキャリアを開始し、経済メディア、小売専門誌を経て独立。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多様なテーマを取材・執筆している。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に「出生数75.8万人の衝撃」「奈良のシカ」(ともにJBpress)、「リニア 20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks)、「精肉MDの新常識」(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。