大泉洋、山下智久、伊藤沙莉…超豪華キャスト「俺たちの箱根駅伝」 日テレが威信を懸けるドラマの見どころ
主役はテレビマン
日本テレビ「俺たちの箱根駅伝」(土曜午後9時)が、きょう10日から始まる。大学陸上部と、駅伝中継を担当するテレビ局を舞台にした人間ドラマだ。日テレにとって箱根駅伝は看板の1つ。その舞台裏をドラマ化する以上、半端な作品にはできない。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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箱根駅伝を軸とするドラマでありながら、主人公は大日テレビの徳重亮(大泉洋)。タイトルに偽りありかというと、そうではない。
徳重は箱根駅伝のチーフプロデューサー。総責任者だ。選手たちの力走を最高の状態で放送したいと常に考えている。学生アスリートを心からリスペクトしている。
その徳重にとって頭の痛い存在が、上司の編成局長・黒石武(高橋克典)。上昇志向が強く、箱根駅伝の視聴率を上げ、自分の手柄にしようと考えていた。
黒石は徳重に対し、箱根駅伝にバラエティー色を加え、スポーツに興味のない視聴者も取り込むよう指示する。さらに「NHKの紅白歌合戦を超える視聴率を」と求める。
今年の箱根駅伝の個人視聴率は1月2日の往路が17.0%、3日の復路が18.4%だった。TBS「VIVANT」の2倍近い。驚異的な数字である。
だが、昨年12月31日の紅白は第1部が同23.2%、第2部が同26.4%。放送環境の違いもあって、途方もないくらい差がある(いずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)。
黒石の要求は無茶だった。徳重は思い悩む。どの職場も上司の指示は絶対なのは言うまでもない。
もう1つの舞台が明誠学院大の陸上部。名門だが、箱根駅伝の本選からは3年遠ざかっている。選手たちは、予選会を突破しなくては箱根路を走れない。
チームはベテランの諸矢久繁監督(寺尾聰)の下、予選会への準備に余念がなかった。今年は主将でエースの4年生・青葉隼斗(小林虎之介)が故障からカムバックしたため、箱根駅伝出場への期待が高まっていた。
名門大が予選会から参加するのは珍しいことではない。中央大は総合優勝が14回と最多だが、2016年10月には予選会から走り、しかも箱根路での本大会に進めなかった。次の大会に出場できるシード権が得られるのは、本大会で10位以内に入った大学に限られる。
予選会突破は簡単ではない。その壁に阻まれたのは中央大だけではなく、やはり名門の明治大は1992年から98年まで7年連続で予選落ちを喫した。同大は66回の本大会出場歴があり、7回の総合優勝を果たしている。
予選会の仕組みはシンプル。各大学から最大12選手が出場し、それぞれがハーフマラソン(21.0975キロ)を走る。そして各大学の上位10選手のタイムを合算。箱根駅伝に出場できるのは、合算タイムが10位までに入った大学だけだ。5、6人の選手が好調であろうが、残りの選手がブレーキになると、勝ち抜けない。
ここで、大日テレビの徳重、明誠学院大の青葉に共通点が見えてくる。2人とも自らの課題と向き合わなくてはならない。一方で、リーダーとして部下や部員をまとめるのも務めだ。
駅伝中継の鉄則
駅伝は特殊な競技である。個々のタイムや区間記録を競うため、個人種目的な色合いが強いものの、あくまで団体競技。選手全員が一枚岩にならないと勝ち抜くことができない。舵取り役を担うのが青葉だが、同時に自らの好成績も絶対条件となる。
徳重に視線を移すと、部下で中継を統括するセンターディレクター・宮本菜月(伊藤沙莉)は、箱根駅伝への思い入れが強い。選手たちの姿を完璧な形で視聴者に伝えるのが目標であり、バラエティー色は受け入れそうにない。徳重は悩ましい。
そもそも箱根駅伝の主人公は学生たち。それが守られてきたから、単なる風物詩では片付けられぬ唯一無二の存在となった。日テレの元駅伝中継制作スタッフは、局内で守り抜かれている鉄則の一部を語ったことがある。
「下位校による『繰り上げスタート』と、10位まで得られる『シード権争い』は必ず伝える。選手全員が主人公だから、先頭集団ばかり追わない」(元駅伝中継制作スタッフ)
「選手の出身地、出身高はテロップなどでしっかり伝える。郷里から声援を送る人たちの存在を忘れてはならない」(同)
箱根駅伝は学生長距離選手とファンにとって、甲子園に近い。夢の大会なのだ。それを裏付けるデータもある。箱根駅伝を含め、学生3大駅伝の1つである「全日本大学駅伝」の前回大会は、テレビ朝日が2025年11月2日に放送したが、個人視聴率は1部が3.8%、2部が6.1%だった。
同じ3大駅伝でありながら、箱根駅伝とは毎回、大差が付く。高校野球の明治神宮野球大会などには世間があまり関心を示さないのと似ている。
夢の大会だから、選手側も出場に向けて懸命になる。高校球児は甲子園出場のために越境入学も辞さないが、箱根駅伝の場合は浪人だ。総合優勝13回の早稲田大の場合、2012年などに山登りの5区を走った同大の山本修平氏(35)も1浪した。2浪以上の例も相当数ある。
一方で、大日テレビでは黒石が強権を発動する。芸能界の総元締めと呼ばれるタムケンプロダクションの田村健一郎社長(小日向文世)に対し、人気お笑いタレント・畑山一平(生瀬勝久)の出演を独断で依頼してしまう。箱根駅伝に出すというのだ。
徳重はどうするのか。仮に黒石と田村の面目を潰せば、サラリーマン人生の前途はない。かといって箱根駅伝にお笑いタレントを登場させたら、選手たちと部下への裏切りとなる。
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