「公安1課の時代は終わりを告げた」…「よど号ハイジャック犯」死亡情報のウラで“公安警察”の地殻変動 過激な左翼や右翼ではない“新たなテロリスト”の存在

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外事部門が一時“主役”に

「ブントの時代は完全に終わった。同時に金看板だったサンタンもお役御免ということだ」

 同元幹部がこう語るように、公安1課の中でも、昭和の時代は花形だった対ブント捜査を担う旧第3担当、通称「サンタン」の主な仕事は事実上、よど号事件の「残務整理のみだろう」(同)という。

 よど号ハイジャック事件で国際手配されていた赤木容疑者(78)が死亡したとなれば、北朝鮮に残るメンバーは、小西隆裕(82)ら3容疑者のみ。革マル派の担当捜査員は、右翼の担当が公安3課から2課にスライドしたことに伴い、専従を外れて公安1課に再合流した。

 前出の警察関係者はこう語る。

「平成の時期、共産主義の衰退とともに公安を冠した課の業務が縮小。一方で2001(平成13)年、米国でアルカイダによる同時多発テロが発生しました。さらに02(同14)年には、北朝鮮の金正日国防委員長(当時)が日本人拉致を認めたことで、外事を冠した課の重要性がアップしたのです。19(令和元)年12月には中国が初の国産空母『山東』を就航させ、海洋進出は日本にとって喫緊の脅威となったこともあり、外事の担当課は2つの体制から3つ、4つへと拡充されました」

 だが、外事4課の発足からわずか3か月後、外事1課が手掛けた「大川原化工機事件」の起訴が初公判を前に突然、取り消される。23年には大川原化工機側が「一連の逮捕と起訴、勾留は違法だ」として訴えていた国家賠償訴訟で東京地裁が違法捜査と認定。「犯罪を捏造して冤罪を生み出した」として、外事部門が批判の矢面に立たされた。

 一方で22年の安倍元首相の事件から1年半が経過した24年4月、警察庁は地域、交通、刑事、生活安全、警備の各部門が職務質問や相談対応、捜査過程やネット上で得たローン・オフェンダーに関係する危険情報を、警備部門(*)に集約評価する運用の全国展開を決定。ローン・オフェンダー対策の全国一元化を掲げた。翌25年4月には警察庁に司令塔となるローン・オフェンダー等対策室を新設。これに合わせて警視庁に設置されたのが、新生「公安第3課」なのである。

 右翼専門部署として名をはせた伝統の公安3課は、右翼団体と二足の草鞋を履く例も少なくなかった暴力団の衰退も相まって右翼活動が停滞すると、公安2課へと名称を変更。全国の公安警察にとって最重点課題となったローン・オフェンダーの専従部隊に“居場所”を譲った。赤木容疑者の死亡が報じられたタイミングは、図らずも公安部内のこの政権交代を、際立たせる結果になったというわけだ。

*警備部門 警察内部の一部門。機動隊などを運用して文字通り警備活動を担う警備警察(警備実施)と国家の体制を損なう恐れのある犯罪を捜査する公安警察に大別される。公安警察(公安捜査)はさらに、国内勢力と対峙する公安の部署と、国外勢力と対峙する外事の部署に分かれている。

岡本純一(おかもと・じゅんいち)
ジャーナリスト。特捜検察の捜査解説や検察内部の暗闘劇など司法分野を中心に執筆。月刊誌「新潮45」(休刊中)では過去に「裏金太り『小沢一郎』が逮捕される日」や「なぜ『東京高検検事長』は小沢一郎を守ったか」などの特集記事を手掛けた。

デイリー新潮編集部

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