「公安1課の時代は終わりを告げた」…「よど号ハイジャック犯」死亡情報のウラで“公安警察”の地殻変動 過激な左翼や右翼ではない“新たなテロリスト”の存在

国内 社会

  • ブックマーク

ボストンマラソンが契機

 だが、1989(平成元)年にベルリンの壁が崩壊。91(同3)年には旧ソ連が崩壊し、共産主義は終末期を迎える。平成となった日本でも、極左過激派集団の活動は失速。テロの動機が、共産主義や民族主義などの“思想”だった昭和から、平成の変革期を経て、自己中心的な承認欲求や自殺願望などの“自己愛”となる令和の時代に突入した。

「つまりテロリストは、左翼や右翼の活動家から、ローン・オフェンダー(単独テロ犯)に取って代わったというわけです」(同元幹部)

 ローン・オフェンダーという言葉が、日本のメディアに頻出するきっかけとなったのは、2013年のボストンマラソン爆破テロ事件である。同年4月に米マサチューセッツ州の州都ボストンで毎年行われている国際的スポーツイベント「ボストンマラソン」のゴール付近で爆弾が爆発。さらにその後の銃撃戦も含め6人が死亡したテロ事件だ。

 犯人は特定の国際テロ組織には所属しておらず、ネットを通じて過激な考えに傾倒。手製爆弾で犯行に及んだ兄弟で、FBI(米連邦捜査局)などが「世界的に使用されているローンウルフの呼称は、テロリストを孤高の一匹狼として美化し、英雄視につながる懸念がある」と注意喚起を行い、単独の攻撃者を意味する事務的表現へ切り替えたことに端を発する。

 日本でも10年程前から組織的なテロではなく、社会的孤立や個人的不満を契機に過激化するローン・オフェンダーによる無差別テロが多発。2016年、相模原障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件は「障害者は不幸を生む」との偏った主張に基づき「社会のため抹殺すべき」とする歪んだ正義感が動機のテロだった。

 18年の東海道新幹線無差別殺傷事件では、小田原駅で逮捕された男が「無期懲役になって刑務所で暮らしたい」と身勝手な動機を供述。翌19年の京都アニメーション放火殺人事件は「小説のアイデアを盗まれた」との妄想に基づく復讐心と自殺願望が“着火点”となっていた。極めつきが、22年の安倍晋三元首相銃撃事件である。動機として語られたのは、旧統一教会への怨恨と、社会への訴え。入信した母親の多額の献金によって家庭が崩壊した恨みを、国内に教団を広めたと勝手に決めつけた安倍元首相にぶつけて晴らすとともに「社会に教団の拝金主義的側面を告発しようとした」(警察関係者)とされる。

次ページ:外事部門が一時“主役”に

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。