58歳夫の人生に刻まれたのは、妻ではない“碧い目の女性” 合鍵を渡した奇妙な3年間…ある朝「あの女、出て行ったわよ」

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【前後編の前編/後編を読む】妻が家に連れてきた21歳女性に「寝たって言う」と脅されて…深夜の呼び出し、秘密を重ねる58歳夫の壊れかけた家庭

 男性に翻弄されるのが好きだという女性は少ないような気がするが、女性に翻弄されることをどうしても避けられない男性というのは存在する。たとえば谷崎潤一郎の『痴人の愛』や手塚治虫の『ばるぼら』などがいい例ではないだろうか。時代は違えど、自由奔放ながらどこか芯のある女性に無条件に惹かれ、報われようと報われまいと尽くしてしまう男性がいるのではないかと思えてならない。それは女性が男性に振り回されるのとは、何かが違い、限界がないのだ。だからこそ底なし沼になってしまう。

 知人たちに会った席で『ばるぼら』の話をひとしきりした後、そこにいた角田景太郎さん(58歳・仮名=以下同)が「僕も女性に血迷っているところなんです」と苦笑しながら小声で言った。以前からの知り合いではあるのだが個人的な話は聞いたことがなかったので、後日、改めて話を聞く約束をした。

「まさに『ばるぼら』みたいな女性に、若いころはまったことがあるんですよ」

 彼はふうっと息を吐きながらそう言った。

「大学を卒業して就職して3年目だったかな。25歳のころでした。僕には大学時代からつきあっている同い年の彼女がいて、ふたりとも仕事が落ち着いたら結婚するつもりだった。そんなときに出会ってしまったんです。ばるぼらのようなエリカに。当時、彼女は18歳と言っていましたが、実はもっと若かったのかもしれない」

不愛想な彼女に惹かれ…

 出会ったのは同僚と行ったパブだった。エリカさんはそこで働いていた。今だったらまずあり得ない話だが、当時は店主の親戚で18歳と紹介されたので違和感がなかったという。どこかふてぶてしい雰囲気で、お酒を運んできても黙って置いていくだけ。一緒に飲まないかと誘うと席に座り込んで飲むのだが、礼も言わずにぷいといなくなってしまう。

「同僚は『ちょっと変わった子だよね、いつもああなんだ』と言っていたけど、僕は彼女に興味を抱いたんです。彼女の目が、ものすごく深い緑色に見えたから。その後、ひとりでそのパブに行ってみたら、彼女がカウンターで飲んでいた。一緒にいいかなと言うと、振り向いて隣の席を顎でしゃくりました。グラスを片手に『きみの碧の瞳に』と言ったら、彼女はフッと鼻で笑ったけど、それからは話しかけると答えてくれるようになったんです。とはいえ、個人的な話には応じない。急に『ピカソの青はね……』と話し始めたときはびっくりしました。彼女はものすごく美術に見識をもっていたんです」

 自分でも描くのと尋ねると、「私の絵はくだらない」と吐き捨てるように言った。それでもコースターにすらすらと景太郎さんの似顔絵を描いてくれた。その筆致が繊細で、でも自分の特徴をとらえているようで、彼は心からうれしかったという。

「それ以降、僕は彼女に会いたくて毎日のようにそのパブに行きました。彼女がいるときもいないときもあった。夜中にふいっと現れることもあった。店主に彼女のことを聞いてもほとんど教えてくれなかったけど、通っているうちに彼女目当てで来ている男も少なくないとわかりました」

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