「完全寛解84%」という驚異的なデータも 「がん光免疫療法」の最先端をレポート
6年無病で生存
こうした“勝負の4~5年”に向けて、今年6月、米国立衛生研究所では第1回光免疫療法国際学会が開かれた。
小林医師のチームをはじめ、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアから研究者や臨床医が集まり、頭頸部から婦人科、膵がんまで、基礎・臨床の最新データを持ち寄った。
「最新データの発表だけでなく、最終ゴールを見据えたセッションをいくつか設け、まだサイエンスレベルの話も含めて、皆で議論できたのが良かった」と小林医師は語る。
「そういう意味でも将来の展望は確実に広がっているなという印象を持っています」
学会会場で拾った声をいくつか紹介する。
オランダ・グローニンゲン大学のG・M・ヴァンダム医師は、「これは確実にがん治療の次のフロンティアになると思った」と語った。
米トマスジェファーソン大のD・コグネッティ医師はこう述べた。「『もう長くはない』と言わざるを得なかった患者さんが、治験で光免疫療法を受けてすでに6年無病で生きている。こういう例を見ると、研究をもっと先に進めるべきだと思う」
前出の北海道大学の渡利・朝野両医師は、「婦人科がん専門医の認知をどう広げるか」「“光免疫療法”とうたいながら、国が承認した保険適用の光免疫療法とは異なる“別の治療法”から患者をどう守るか」という課題を持ち寄った。
そんな議論をまとめるように、開発者の小林医師の上司に当たるピーター・チョイキ博士は、将来の風景をこう描く。
「20年後の姿として私が思い描いているのは、抗体薬がぎっしり並んだ薬局があって、患者の腫瘍が何を発現しているかをよく理解した上で、その患者さんに最適な組み合わせを選ぶ未来です。そうなれば、がんと診断されても、以前ほど大ごととは感じられなくなるでしょう。医者に行って注射を受け、光を当ててもらえば、それで終わりだからです」
がんを「光で治す」という話は、絵空事に聞こえるかもしれない。
しかし、日本で始まった5年の実臨床と、アメリカで開かれた世界会議は、その“絵”の輪郭をはっきりした現実にしつつある。
この数年の進捗次第で、「光のメス」がどこまで当たり前の治療になるのか――その未来図がおぼろげながら、しかし確実に見え始めている。


